99年6月の本のほらあな


「シャーロック・ホームズの愛弟子 女たちの闇」6月7日

著者:ローリー・キング、訳者:山田久美子、出版社:集英社文庫

前作「シャーロック・ホームズの愛弟子」の続編。まだ読んでない人のために書いておくと、
シャーロック・ホームズの愛弟子とはメアリ・ラッセルのことです。ある夜ロンドンのイース
トエンドでオックスフォード時代の友人に会うメアリ・ラッセル。その友人は新興宗教集団の
<神の新しい聖堂>に入信していた。そこへ覗きにいくメアリ。彼女はその集団の女指導者
に興味を抱くのだが、その新興宗教の周辺で起こる裕福な入信者の不可解な死のことを知る。
そんなとき彼女の友人、そしてメアリ本人も何者かに狙われる。果たして真相は・・・。前半は
もう一つ物語のテンポが悪かったが、後半になり俄然面白くなっていきます。しかし読んでい
てどうもイメージが湧かなかったのが当時の女性の服装です。1920年代のアメリカを思い
浮かべてもいいのかな?一応ホームズの引退後を描いた作品ではあるけど、ホームズというと
どうしてもビクトリア朝末期をイメージしてしまいます。原作のホームズものの影響が強いわ
しであった・・・。だが最後にあっと驚く仕掛けあり。これに関してどう思うかは意見が分かれる
と思いますが。他にも女性問題を扱った作品ということもあって女性たちの意見も聞いてみたい
ところです。このシリーズ、アメリカ本国ではすでに5冊目らしい。続きを読んでみたい気も・・・。

「慟哭」6月9日

著者:貫井徳郎、出版社:創元推理文庫

評判の作品ということで読んでみました。評判に違わぬ作品といえるでしょう。連続幼女失踪事件
はやがて殺人事件へとなってしまう。苦悩する捜査一課長の佐伯。彼は異例の昇進を果たした切れ
者のキャリア組だったが、上からは叩かれ下からは突き上げられ苦悩していた。それと平行にある
男が新興宗教に引かれていく過程が語られていく。二つの物語はいったいどういう関わりがあるの
か?・・・ミステリとしてはともかく読み物としては非常に面白かったです。新興宗教の生態などが、
浮き彫りにされてるし最後まで興味を失うことなく読めました。ただ落ちは最初から怪しいと思っ
ていた通りになってしまったのが、ちょっと残念・・・かな?ただいかような方向にでも書き進められ
るような構成はデビュー作とは思えないほどの力量を感じました。それにかなり読みやすかった。

「わたくし的読書」6月14日

著者:太田垣晴子、出版社:メディアファクトリー ダヴィンチブックス

これは面白い!わしの中ではけっこうヒットです。イラストコラムってのを読んだのもはじめてか?
ダ・ヴィンチに連載されていたのを一冊にまとめた本です。連載の時はほとんど目を通してなかった
けど、これほど面白いとは思ってなかったです。内容はというと題名で想像される通り、読んだ本の
感想なんですが、それぞれテーマが決まっており、日常生活とうまく重ねあわせて描かれています。
分野を限らない乱読なのもいい。タッチはコミカルで下手なコミックや本より笑わせてくれる。女性
には共感できる点も多々ありそうでお勧め。30分もあったら読めそうだけど意外と奥が深くて何度
も読み返してしまいそう。実はこの本を似顔絵コーナーの参考にしようと思ってたりする(笑)。

「時計を忘れて森へいこう」6月14日

著者:光原百合、出版社:東京創元社

軽くてさらさら読めました。童話出身の作家のようでメルヘンチックな雰囲気は悪くない。
中は3編の短編で出来ており、主人公は若杉翠という高校生の女の子。本格ミステリとはい
い難いかもしれないけど、謎解きです。で、謎を解くのはその翠ちゃんが好いている深森護。
自然解説指導員(レンジャー)を生業としている飄々とした人。なかなかキャラも悪くない。
なにより気に入ってるのは殺人事件が起きないこと。殺人事件なしの面白い謎解き小説って
もっとあってもいいような気がするのですが、この作品はそれにあたるかも。ただ事件が大
きくないせいもあって、本格ミステリー的読み方をするとがっかりするかも。わしはこうい
う柔かな感じの小説も好きです。わしも時計を忘れて森へいきたい・・・って時計はしない
主義だったりするけど(^^;。そういや森とかは仕事でたまーにいくんだよね・・・。

「新・超怖い話」Q巻6月28日

編著者:デルモンテ平山、出版社:ケイブンシャ文庫

怪談実話集。4巻はなく9巻はQ巻になっている。少しでも不吉なことを減らそうとでもいうのか?
実話集は山のように出ているが、怖面白いのはこのシリーズと「新耳袋」だけである。この内容が
仮に創作であっても読み手を引き付ける。夜中に読むのはちょっと怖いかも。どれもこれもユニーク
で不思議で怖い話ばかりであいかわらず見事な怪談集として仕上っている。しかしお祓いもせずに
作るのはやめてほしい。なんだか洒落になってないような…。編者が無事でシリーズが続くことを祈る。

「新耳袋」第4夜6月28日

編者:中山市朗、木原浩勝、出版社:メディアファクトリー

「新・超怖い話」に引き続いてまたもや怪談実話集。今回も面白いです。やっぱり一晩で続けて
読む勇気はなかった(^^;。特に印象に残った話はUFO関係では有名な「黒い男(ブラックメン)」
に関する話。UFOに深く関わりすぎた人たちが消えていくんです…。ちょっと怖すぎっす。
特に編者自身が体験した話はなかなか怖い。あと印象に残ったのは68話の「死期がわかる」。
病気で臨死体験をした人が人の死期が分かるようになったという話なんですが、問題はノストラ
ダムスの予言にあった来月について。ネタは明かせないけどちょっと興味ありな人はお勧めっす。

「たたり」6月28日

著者:シャーリイ・ジャクスン、訳者:渡辺庸子、出版社:創元推理文庫

昔読んでいた作品なんですが、邦題が違うため再版なのに気づかずに買ってしまった本です。
ちなみに昔の題名は「山荘綺談」早川文庫NV。内容をほとんど忘れていたのでまあいいやと
読んでみました。とある山奥にある古い屋敷。そこに超常現象の研究家であるモンタギュー博士
が調査のため2人の女、1人の男を呼んだ。屋敷は意志を持つかのようにじわじわと彼らを恐怖
へと導いていく…。いやー、やっぱり怖い。いわゆるモダンホラーってのとは違う感じだけど
じわじわと襲ってくる恐怖はホラー小説として一級品です。ホラー好きにはお勧めの逸品。

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