漆の不思議

このペ−ジでは、以外と知られていない漆の特性についてお話します。



漆器は、塗り上がり時すぐは、色目が くすんで仕上がるのをご存知ですか。

例えば、朱漆で仕上げた場合は、塗り上がってすぐは、ほとんど茶色に近い朱色で、くすんだ色目に仕上がります。サンヨウ朱と呼ばれる朱漆を使って仕上げる 香川漆器の後藤塗り などに 特に顕著に見られる特徴です。その他 色漆を使って仕上げた場合にも、一様に見られる特徴なのです・・・・これが、漆の持つ独特で神秘的な色の変化への始まりとなるのです。
化学塗料などは、塗り上がり時すぐには鮮やかでも、歳月が経つに連れて色あせて行きますが、漆は塗り上がり時すぐには、くすんだ色目でも 歳月が経つに連れて(ご家庭で ご使用の場合4〜5年程です。)本来の鮮やかな色へと変化して行きます。10年・20年・30年と歳月が経つに連れ 漆は、その色目に鮮やかさ風合い が出てまいります。よく言われる「漆の色目が枯れて味が出る。」とは、このことです。
塗り上がり時すぐには、少し くすんだ色目でも、同じ色漆を使って仕上げてあれば、歳月と共に色目が同じように 鮮やかに変化してまいります。仕上がり時すぐには、少し違う色目に見えても、決して違う色漆を使って塗っているのではありませんので、ご安心下さい。
この漆の特徴である色目の変化を見るのも、漆器とふれあう楽しみのひとつなのです。





漆に かぶれない方法を ご存知ですか。

よく聞かれる質問なのですが、「漆職人の方は、漆かぶれ をしないのですか?」と よく聞かれます。答えは、「漆職人でも漆が肌に直に付くと、やはり かぶれます。人によっては、多少の漆が付いた程度では、かぶれない人もいますが・・・・実は私もそのひとりです。
漆職人も熟練してきますと、作業中に漆を関係のない所(つまり自分の体)には、ほとんど付けないだけなのです。漆が体に付かないのですから、かぶれる訳はありません。未熟な職人ほど漆を器物に塗らないで、自分の体に付けて かぶれてしまうのです・・・・そういう私も始めは、しょっちゅう漆を体に付けていました。
でも、漆にかぶれにくくする方法がひとつあります。もともと、漆かぶれ とは、体に付いた漆が皮膚の上で乾こうとする時に起こる炎症の一種ですから、(一度乾いてしまった漆から かぶれる ことはありません。もし、かぶれた とすれば、それは神経性のかぶれだと思われます。)漆が皮膚の上で乾かないようにしてやれば 漆かぶれ を防げます。。つまり、漆の乾きを妨げるものを体に塗っておけば 漆かぶれ を最小限に食い止められるのです。漆の乾きを妨げるもの・・・それは、(ご家庭でしたら、サラダ油)です。漆は油の膜の上では、乾きませんので、体に油を塗っておけば、漆かぶれ は最小限に食い止められます。(一度乾いてしまった漆には、乾く前には大嫌いだった油も通用しません。)これは、漆職人の経験から導かれた知恵です。
でも残念なことに、我々漆職人は この予防策が使えません。なぜって・・・・だって 漆が乾かなければ 我々は仕事にならないからね。





漆は、周りが湿った環境に置くと乾くのを ご存知ですか。

普通は、洗濯物でもペンキや化学塗料でも、外が晴れていて 湿気のない乾いた環境に置くと乾きますよね。ところが、漆というものは、雨が降って湿度が上がった状態の場所に置かないと乾かないのです。ですから、漆器を造る場合は、ムロと呼ばれる ちょうど、ご家庭にある押し入れのような所に水を打って中の湿度を70〜90%ほどの 雨降りの日と同じ湿度に保たれた所に入れて乾かせます。わかりやすく説明しますと、梅雨の時期には漆がよく乾くのです外が湿ると漆が乾く!ほんとに不思議ですね。





考えてみませんか?環境ホルモン(内分泌撹乱物質)

昨今、大きな問題となっている環境ホルモン。給食の器などでよく使われているポカリ−ボネ−トというプラスチック製の食器に熱湯をかけると、環境ホルモンの一種が溶け出す恐れがあるという問題です。環境ホルモンは、子孫を残す機能に害をおよぼすと言われています。少しの量なら問題は無いと言われていますが、研究は まだ始まったばかりで、わからないことが多いようです。
難しいことはよくわからないにしても、はっきりと言えることは、人間が生活して行く上で自然が与えてくれた天然素材に勝るものはないと言うことです。漆器に使われている素材(木・漆)は全て自然が与えてくれたものです。人間は、便利で簡易な生活を求めるあまりに、どこかに なにか大切なものを置き忘れてきてはないでしょうか?大量消費に支えられた大量生産。大量生産とコスト減のために生み出された化学合成物質。使い捨ての時代が生み出す、大量のゴミ。そして、不法廃棄物から出る有害物質。漆器制作という伝統工芸の世界にいる私にも、今このことが、たいへん大きな問題として感じられます。
次世代の子供たちや地球に住む全ての生き物のためにも、ご家庭でお使いの器ひとつからでも始める環境保護の精神があれば、それはやがて大きな力となるのではないでしょうか?





漆の木って、リサイクルされているのを ご存知ですか。

ここでは、私たちが塗料として使っている漆を採取する漆の木について、お話します。 漆の木は、約10年かけて大きくなります。 10年かけて育った漆の木から、漆かき職人(漆の木から漆を取る職人のことです)が1滴1滴すべて手作業で漆を採取します。1本の漆の木から採取できる漆の量は、たいへん少量で約200gしか取れません。 漆かき職人は1年間のうち 6月から9月にかけて漆を採取します。6〜7月の早い時期に取れる漆は、水分を多く含んでいて 乾きが早いことから、おもに高級な仕上げ用の漆になります。次に7〜8月に取れる漆「盛り」と呼び(食物にたとえると旬にあたります)おもに上塗り用の漆になります。最後に8〜9月に取れる漆は、下塗りをする時の下地用漆になります。 こうして漆を採取した後、漆の木は、根元を残して切り取られます。そして翌年になると、切り残された根元から 新しい漆の木が数本芽生えてきます。その中の一番成長の良さそうな1本だけを残し あとの芽を全て切り取ると、残された1本が10年かけて成長して行き 10年後には また漆を採取できるのです。 どうですか、これってリサイクルでしょう。 地球の資源・環境にやさしいと思いませんか? 私たちの祖先は昔からこのサイクルで、漆を採取してきました。やはり、昔から受け継がれるものには、それなりの訳があるのです。地球の資源・環境を考えるとき、私たちは、もっともっと先人達の知恵や習慣を学ばなければならないのかもしれません。



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