西サハラ紛争

〜 ポリサリオ戦線の反撃なるか 〜



西サハラにおいて、西サハラの大半を占領するモロッコと、西サハラの独立を目指すポリサリオ戦線との軍事衝突が勃発した
もうワクワクして、大興奮で夜しか眠れない状態だ。

(ピッグ)「またまた民族紛争ですか」
(幹事長)「テレビゲームより面白いやろ?」


残念ながら、西サハラ紛争については、エチオピアのティグレ紛争ほど造詣が深い訳ではない。
ただ、ほとんどの日本人は無関心で何の知識も持っていないだろうから、西サハラ紛争の背景から説明しよう。
て言うか、そもそもほとんどの日本人は、西サハラそのものについても無関心で何の知識も持っていないだろうから、そこから説明しなければならない。

西サハラアフリカ大陸の北西部に位置し、名前の通りサハラ砂漠の西の端っこの海岸部にあり、大西洋に面している。
北はモロッコ、南東部はモーリタニアに接し、東のほんの一部だけアルジェリアと接している。
面積は約266千km2で、日本の本州より一回り大きいが、南のモーリタニアと同様に国土の大半がサハラ砂漠で、わずかに点在するオアシスと一部の沿岸部だけが居住可能地域だ。
そのため人口は僅か57万人で、鳥取県と同じくらいだから、かなり人口密度は低い。

北に接するモロッコが西サハラ紛争の元凶だ
モロッコは地中海の西の端っこにあり、古くから文明があった国だが、近代においてはヨーロッパ諸国の分捕り合戦の餌食になり、第二次世界大戦中はフランスの勢力下にあった。名画「カサブランカ」の舞台になったカサブランカは、首都ラバトをはるかに上回る人口を擁するモロッコ最大の都市だ。
第二次世界大戦が終わるまでモロッコはフランス領だったが、1956年に独立した。

一方、西サハラはスペイン領だったが、1975年にスペインが領有権を放棄して撤退した。その際、スペインの了承の下、西サハラ北部をモロッコ、南部をモーリタニアが分割統治をする秘密協定が結ばれ、1976年にモロッコとモーリタニアが西サハラの分割統治を開始した
しかし、西サハラの独立を目指すポリサリオ戦線がアルジェリアの支援を得て武力闘争を開始し、アルジェリアの首都アルジェで亡命政権サハラ・アラブ民主共和国を樹立した。

ポリサリオ戦線は、まずモーリタニアを集中的に攻撃して戦闘を有利に進めた。多額の戦費支出によってモーリタニアの国家財政は圧迫されていき、遂にはモーリタニアでクーデターが起きたことにより、1979年にモーリタニア政府はポリサリオ戦線と単独和平協定を締結し、西サハラの領有権を放棄した
ところがモーリタニアが放棄した領域にモロッコ軍がすぐさま侵攻したため、ポリサリオ戦線とモロッコとの戦いが始まった

その後、1991年には国連の和平提案をポリサリオ戦線とモロッコの双方が合意し、停戦が実現した
その内容は、住民投票により西サハラの独立かモロッコへの帰属を決めるというものだった。
しかし、西サハラには遊牧民が多くて有権者の認定が困難だという理由で、住民投票は無期延期となっている。そして、インフラ整備などによりモロッコは西サハラの実効支配を既成事実化している。
さらにモロッコはモーリタニア国境に沿って「砂の壁」と呼ばれる防壁を築いてポリサリオ戦線を排除するとともに、大量の地雷を埋設している

以上のような経緯を考えると、強引に領土を占領して併合しようとするモロッコは悪者であり、独立を目指すポリサリオ戦線を応援したくなるところだが、そう簡単には割り切れない。
なぜならモロッコはアフリカでも数少ない西側諸国寄りの国だが、ポリサリオ戦線やバックにいるアルジェリアはロシアや中国と関係の深い国だ。
そのような背景から、ポリサリオ戦線によるサハラ・アラブ民主共和国はアフリカ諸国や中南米諸国を中心に、多くの国から国家として承認されている。
一方、モロッコによる領有権の主張は大多数の国から認められていないが、欧米や日本などの先進諸国はモロッコとの関係を重視して、サハラ・アラブ民主共和国を国家としては承認していない。

このような世界情勢から、事態は長年、膠着状態にあったが、11月になって突然、戦いが再開された
モロッコは、ポリサリオ戦線が実効支配する地域において交通が妨害されているため、「民間、商業目的の自由な交通循環を取り戻す」と宣言して軍事作戦を開始したのだ。
これに対して、当然ながら、ポリサリオ戦線も停戦の終了を宣言した

住民投票が実施されないままモロッコによる実効支配が続くことに我慢できなくなったポリサリオ戦線が、何らかの行動に出たのが原因なのかどうかは分からない。
しかし、停戦の条件であった住民投票が実施されないまま停戦が永久に続く訳もないから、戦闘の開始は時間の問題だったとも言えよう。
これまでの経緯を考えると、モロッコの軍事的優位は揺るがないように思えるが、かつてはモーリタニアを破ったポリサリオ戦線の力も侮れないので、今後の成り行きにはワクワクして目が離せない。

(2020.11.25)



〜おしまい〜





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