Mー1グランプリ漫才論争

〜 Mー1の在り方 〜



今年も漫才日本一を決めるM−1グランプリが開催され、マヂカルラブリーが優勝した。
この結果に対して世間では漫才論争が巻き起こっている。一言でいうと「あんなのは漫才じゃない」っていう批判だ。

実は今回のマヂカルラブリーの1本目のネタは、決して新しいネタではない。ほとんどの人は知らないだろうが、お笑いに関して非常に造詣の深い私は、かなり以前に見たことがあるネタだ。
初めて見たとき、あまりに画期的に面白いネタだったので、すごく感動した私が見た過去のあらゆるお笑いのネタの中でもトップ10に入るような面白いネタだった。

なので、今回のM−1決勝10組の1本目のネタの中ではトップ3に入って何の違和感も無いものだった。
個人的にはマヂカルラブリー、ニューヨーク、オズワルドの3組が面白かった。ウエストランドも悪くなかった。
一方、面白くなかったのはおいでやすこが錦鯉で、思わずテレビのスイッチを切りたくなった。また東京ホテイソンアキナはいつものキレが無く、つまらなかった。残るインディアンズ見取り図は、まあ普通に面白かった。

これらのうちファイナルに進出したのはマヂカルラブリー、見取り図、おいでやすこがの3組だ。
おいでやすこががファイナルに残った時点で、私は審査員に大きな不信感を抱いた。そして、おいでやすこがの2本目のネタは、1本目以上に面白くなく、というか見ててイライラして腹が立つようなネタだったので、絶対に優勝してほしくないと願った。なぜなら、何も面白い要素が無いからだ。頭が空っぽの人なら面白いと思うのかもしれないけど、中身はゼロだ。
見取り図は2本目も普通に面白かったが、M−1優勝にふさわしいような爆発力は無かった。
じゃあマヂカルラブリーの2本目は面白かったかと言うと、はっきり言って、全く面白くなかった。強烈に面白かった1本目に対して、あり得ないほどつまらなかった。
つまり、ファイナルの3本のネタは、なんとかマシだったのは見取り図だけで、後の2つは本当に面白くなかった
しかし、だからと言って、見取り図がM−1優勝にふさわしいかと言うと、あまりにもインパクトに欠ける。爆発力に欠ける。
その点、マヂカルラブリーは1本目のネタが強烈だったので、2本目がつまんなくても許してやっていいか、って感じだった。

結果はマヂカルラブリーが優勝したから、一応、安堵したが、マヂカルラブリーに入れた審査員は7人中3人だけだから、きわどい優勝だった。
そして、この結果に対して、世間で批判が巻き起こった

論点は2つ
まず1つ目は、ストレートに「面白くなかった」という批判だ。
どう考えても三組中一番つまらないネタだった
全く意味わかんない。面白くない
マヂカルラブリーのネタって全然面白くない。何でこんな全く面白くないネタがM−1優勝するん?
などと言う意見が溢れている。
これに関しては、私は少なくとも1本目のネタは驚異的に面白いと思うので、批判に同調しない。2本目のネタは面白くなかったが、どちらかと言えば、おいでやすこがの方が遥かに面白くなかった。
お笑いは好みの問題なので、同じネタを見ても、面白いと感じる人と面白くないと感じる人が分かれるのは仕方ない
一般的に行って、東京のお笑い芸人のネタは面白くない事が多い。ちょっと嫌味でキザでつまんないのが多い。
しかしマヂカルラブリーは非常に面白いと思う。マヂカルラブリーを面白くないと思う人は、私とは感性がズレているのだろうから、議論したって意味はない。何を面白くないと思うかなんて、理屈で説明できるものではない
て事で、1つ目の論争は永遠のすれ違いに終わる論争であり、好みの問題だから、そもそも論争にならない。

しかし、2つ目の論点は重要だ。「あれが漫才なのか」という批判だ。
マヂカルラブリーが面白くないとか、そういう事じゃなくてジャンルが違うやろって事
M1はもう漫才師の頂点を決める番組ではなくなったね。見取り図やインディアンス、ニューヨークじゃなくてマヂカルラブリーが評価されるのは漫才ショーレースとしておかしくないか?
これには私も同調する。今回のネタで圧倒的に面白かったのはマヂカルラブリーの1本目のネタであり、それに比べたら、ニューヨークやオズワルドのネタは爆発力に欠ける。
しかし、マヂカルラブリーのネタが漫才なのかと言われると、私は「漫才ではない」と言い切れる。あれは漫才ではない
2本目のネタは、そもそも面白くなかったが、1本目以上に、漫才からかけ離れていた。史上まれにみるほど面白くなかったおいでやすこがも漫才とは言えない下らない芸だが、マヂカルラブリーのネタも漫才ではない

世間で「あれは漫才ではない」という批判が巻き起こっているのに対して、芸人の側からは肯定的な意見が聞こえてくる。やってる方からしたら、「何でもいいから笑わせた方が勝ちだ」ということだろう。
だが、そんな事を言ったら、もう漫才もコントも何もかも一緒くたのごちゃ混ぜになってしまう。それでも構わないというのなら漫才のMの字を関したM−1グランプリじゃなくて「お笑いグランプリ」とかに改名した方がいいと思う。

私の個人的な定義で言えば、「漫才とはラジオで聞いても面白いもの」というものだ。今回の出演者で言えば、ニューヨークやオズワルドやウエストランドは派手な動きが無く、声だけ聴いても十分面白かった
一方、マヂカルラブリーは声だけ聴いても全く分からないだろう。
過去のM−1王者の顔ぶれを見ても、その多くはラジオで聞いても十分に笑える人たちが大半だ。去年のミルクボーイなどは、その典型であり、歴代優勝者の中でもトップクラスだ。

何度も言うように、私は個人的にはマヂカルラブリーは傑出して面白いと思う。なのでマヂカルラブリーを否定するものではない。批判しているのは、あくまでもM−1グランプリの在り方だ。
ルールを改正するか、あるいは枠組みを改正するか、何らかの対応が必要だろう

また、固定化してしまっている審査員の顔ぶれもマンネリだ。あの顔ぶれでは偏った審査から抜け出すことができない
少なくとも、おいでやすこがに投票するような審査員は不要だ。過去にもトレンディエンジェルが優勝した時には「M−1グランプリなんか止めてしまえ」と怒りが込み上げてきたが、相変わらず偏った審査がまかり通っている。

かつてのM−1優勝者というのは、それはもう、誰が見ても押しも押されぬ最強のコンビ揃いだった。
2001年の第1回の中川家から始まって、ますだおかだ、フットボールアワー、アンタッチャブル、ブラックマヨネーズ、チュートリアル、サンドウィッチマン、NON STYLE、パンクブーブー、笑い飯と、本当にどれ1組とっても文句の付けようのないコンビだった。しかも、最後に残った3組は甲乙付けがたい場合が多く、本当に質の高いお笑いコンテストだった。
それが突如、5年間の中断があり、ようやく熱望していた復活となった2015年に、よりによってトレンディエンジェルなんて史上最悪につまんないコンビが優勝したもんだから、怒り狂った訳だ。

出演者のレベルが低下してるってのは事実だ。
コンビ結成から15年以内という規定があるため、面白い芸人がどんどん出られなくなっていっているのが要因の1つだろう。新陳代謝を促すために仕方ない側面はあるだろうが。
それにしても、今年は敗者復活戦を見ていると、ツッコミがやたら大声出してやかましいだけのコンビが非常に多くて目障り聞き障りだった面白くないのを誤魔化すために大声を出しているだけだ。

ただ、その中で、敗者復活戦でも面白いコンビが2つだけいた。ランジャタイカベポスターだ。ところが、なんと、ランジャタイは敗者復活戦で最下位、カベポスターは最下位から2番目だった。
敗者復活戦は審査員が採点するのではなく、視聴者の投票によって決まるので、審査員が悪い訳ではない。あくまでも私が一番面白いと思ったランジャタイは、世間では一番人気が無かったという訳だ。
この私と世間のズレは、それほど驚きではない。私自身、「ランジャタイは面白いなあ。でも一般人には理解できないだろうなあ」って思ってたからだ。
これは12月14日に放映された女芸人No.1を決める「THE W」でも同じだった。私はダントツの圧倒的1位でオダウエダを支持したが、ファーストラウンドであっさり落選し、大して面白くもない吉住が優勝してしまった。
私はオダウエダが圧倒的に面白いと思ったが、「おそらく一般人には支持されないだろうなあ」と思っていた。大して面白くもない吉住が優勝したことも、東京に人には受けるだろうなあと予想されたので、それほど違和感はなかった。

全般的には、出演者のレベル低下はあるにしても、2015年に復活した後も、史上最強とも言えるミルクボーイが優勝した去年だけでなく、銀シャリとろサーモンも優勝しているので、必ずしも最近は面白くないって訳ではない
気の毒なのは、去年が最後の年だったかまいたちが優勝できないまま去って行ったことだ。去年は他に有力がライバルが見当たらなかったため、絶対に有終の美を飾るものと信じていたのに、突如ミルクボーイが出てきて優勝をかっさらっていったため、かまいたちは優勝できないまま消え去った。
去年のミルクボーイは圧倒的に面白かったので、その結果には何の文句も無いが、かまいたちが今年も出場できていれば、ダントツで圧勝していただろう。それなら誰も文句は言わなかっただろう。
ほかにも和牛タイムマシーン3号ダイアン天竺鼠ジャルジャルスーパーマラドーナなど、抜群に面白いのにM−1で優勝できなかったコンビは多い。
年によって面白いコンビが複数いる年と、全然いない年があり、不公平と言うか、運しだいだなあとは思う。まさに人生そのものだ。

(2020.12.28)



〜おしまい〜





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