オリンピック閉幕

〜 がっかりの男子マラソン 〜

アテネ・オリンピックが終わっちゃった。オリンピックは大好きで、毎晩、毎晩、遅くまで起きて、というか、いったん、ものすごく早く寝て、夜中に起き出して早朝までテレビ見て、また少し寝る、なんていう生活を繰り返していたので、慢性的な睡眠不足でフラフラしていたのだけど、そういう生活も終わりだ。こういう夢中になれるお祭りが終わっちゃうと、なんだかもの悲しいなあ。これから何を楽しみに生きていけばいいんだっ!

ところで、最終日の男子マラソンだけど、予想通りではあるけれど、期待に反して、日本人選手のレース展開は物足りなかった
女子マラソンと同様に、酷暑、難コースとあって序盤はスローペースで滑り出し、世界最高記録保持者のテルガトを始めとする4〜50人もの大先頭集団を形成して推移し、日本人3選手も様子をうかがっていた。途中で誰かが少し抜け出しても、誰も追わず、抜け出した奴も、しばらくすると落ちてきて、再び集団に吸収されるっていう展開が続いた。
しかし、20kmを過ぎてからブラジルのデリマがペースアップした。他の連中は、それまでと同様に追いかけなかったのだが、デリマはいつまでも落ちてこず、そのうち焦って、少しでも着いていこうとする選手が出てきて、2番手グループが徐々に縦長となった。その中で、日本人選手では、まず国近が脱落し、続いて諏訪が落ち始め、さらに油谷も少しずつ離されていった。
首位のデリマは、その後、36キロ付近でキチガイと思われるアイルランド人の妨害を受けるアクシデントに巻き込まれ、イタリアのバルディニが38キロ付近でトップに立ち、逆転で金メダルを獲得した。2位には、あまりマークされていなかったアメリカ選手が入り、デリマは辛うじて3位に入った。

日本人選手は、油谷が5位、諏訪が6位、国近は42位だった。ここのところ、入賞もできない惨敗が続いていただけに、5位、6位に入った事を評価する論評も多いが、はっきり言って、物足りない戦い振りでないかい?
何も、結果だけを言ってるのではない。もともと力量的にはメダルは難しいと言われていたのだから、結果は仕方ないかもしれない。しかし、取りあえず、一応は、メダルを狙うような走りを見せて欲しかった。そういう気概が全く感じられなかった。女子の野口は、果敢にも自分から25kmでスパートしていった最後は黒い妖怪ヌデレバに追いつかれそうになったが、なんとか逃げ切った。しかし、仮に、あれが逃げ切れなかったとしても、誰もそれを責めたりはしないだろう。もっと言えば、仮に、もっと早い段階で失速してしまい、メダルを逃すような事になったとしても、その果敢な戦い振りは大いに評価されよう。それに対して、男子は何だ、ありゃあ。最初から、「なんとか、そこそこまで着いていけばいい」っていう戦い振りだ。「一か八かの一発勝負でメダルを狙う」っていう気合いは無かった。なんなんだ、いったい。

油谷選手は、「また5位ですか。メダルが欲しかったですね」なんて言ってるけど、それは我々が言いたい事だ。なんでいつもいつも5位なんだ。それは、リスクを取らないからだ。ハイリスクを取らなければハイリターンは得られないぞ。もちろん、限界だったのなら仕方ないが、本人は「いっぱいいっぱいではありませんでしたし、まだ10キロあるので分からないな、と思っていました」とのことだ。そら、いかんぞ。そなな余力を残していたら後悔だけが残るぞ。

6位だっただ諏訪選手は、「レースはすごいきつかった。スタートからこんなレースの展開は初めてでした。給水のたびに離されましたね。もう少し先頭に付くはずだったんですが。これほどだとは思いませんでした。遅れたときは、いっぱいいっぱいの寸前でした。本当はもっと付きたかったんですけど、それほどの力はありませんでした」との事なので、こちらは限界だったようだ。仕方ないか。まあ、彼の場合は、もっと大幅に順位を下げていたのに、最後まで諦めずに頑張ったおかげで6位に食い込んだ。なんちゅうても、ゴール直前では、あのワイナイナ選手を抜いたんだから、悪くはないか

一方、僕個人としては、密かに、一番期待していた国近選手は、42位でガックリだ。「泣きそうでした。気持ちはあったのですが、20キロぐらいから、体が付いていきませんでした」とのことだ。一体、何が悪かったのだろう。「暑さも気にはなりませんでしたし、給水もちゃんと取れました。体調は問題なかったです」って言ってるけど、あそこまで順位を下げるなんて、本当に不思議だ。ただ、結果はともかく、本人も「前半は委縮していたのかもしれませんね。前半、後ろにいたのは、足を使わないように、後ろの方からレースを進めました。それは自分のスタイルではないので、もっと積極的にいけば良かったです」と言っているように、やはりレース展開はガッカリだ。彼のコーチである瀬古が「21kmくらいから怪しいと思った。足にくるのが早過ぎた。力を出せなかったのが残念。経験不足?もう31歳だからね」なんて言っている。全くその通りだ。彼らは経験豊富なプロだ。それが、あのレース展開ってのは納得できないよ。

何度も言うけど、結果は、元々の力量もあるから、そんなにうまいこといく訳はない。しかし、元々の力量に差があるからこそ、ここは一発狙って勝負に行って欲しかったなあ。女子の野口のような勇気あるレース展開が欲しかった。レスリングも女子の果敢さに比べて、男子はどうも守りに入ってしまいがちで、それで負けた試合がいくつもあった。一か八か勝負に出ると取り返しの着かない負けになる可能性が大きいのだが、でも、それで守りきったところで、何が残るんだ?守りきるってったって、守るものなんて無いじゃない?失うものなんて何も無いじゃない。それならリスクを取って勝負しなけりゃね。


ところで、20km過ぎからスパートして2位以下を圧倒的に引き離していたデリマは、気の狂ったアイルランド人に妨害され、3位に終わった。デリマに対する妨害は、殴ったりしたものではなく、単にコース外の歩道に押し出しただけで、数秒でレースに復帰できたのだが、さすがにショックはあるだろうし、それ以降、レースに集中できなくなった可能性もある。デリマ自身は「もし、レース中にあの観客が僕に襲い掛からなかったら、たぶん僕が勝っていた。あの行為はとても邪魔だったし、怖かった。リズムを失い、リズムを取り戻すのはとても難しかった」と語っている。マラソンはほんのわずかなことで結果が全く変わってしまうデリケートな競技なので、本当に気の毒だ。

ただーし、彼には非常に気の毒だが、冷静に言えば、あの妨害が無くても、あの時点で、前半から飛ばしていたデリマのペースは明らかに落ちていたし、バルディニの猛追を考えれば、抜かれるのは時間の問題だっただろう。よく3位で踏ん張れたものだ。デルマ自身も、結局は、終始笑顔で「僕はメダルを取れて満足している」とコメントしており、これは彼の率直な感想だろう。
前評判が高くなかった彼が途中までトップを走る健闘をし、最後も投げキスをしながらジグザグに走るユーモアを見せながら笑顔でゴールした事で、ブラジル国民は熱狂しており、彼としては悪くはない結果となった。

乱入したアイルランド人は、過去にもF1やテニスで同様の乱入事件を起こしたことがあるそうだ。彼が優勝したイタリア人や2位のアメリカ人だったら、ちょっとやそっとでは済まなかっただろうけど、直接関係の無い国の人だったので、国と国との問題にまで発展する可能性はない。
しかし、今回のアテネオリンピックは、テレビ放映技術もひどかったし、警備もずさんだった。女子マラソンの野口選手は、スパートをかけトップを独走していた彼女の目の前に、カメラを載せた取材車両が行く手をふさぐように邪魔した場面があった。野口はなんとかスピードを落とさずによけたけど、もし車にぶつかったりしていたら、どうなったことやら。男子マラソンでも、やたら走っている選手の足ばかり接写で撮したりして、危ないことこの上なかった。あなな映像を見て誰が喜ぶんだ?男子ランナーの足が好きな足フェチなんて居るのか?映像技術の下手さと無神経振りは表裏一体だ。

(2004.8.30)



〜おしまい〜





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