橋本県知事再選

〜 時代は逆戻りしない 〜



高知県議会から嫌がらせの辞職勧告決議を受けたことに対抗して辞職した橋本大二郎高知県知事が、再び選挙に勝ち、5期目の県政に入った。ヒジョーに喜ばしい。良かった良かった。

これまで4選連続で既成政党の旧来勢力に勝利してきた橋本知事だが、実は、「今回の選挙は危ぶないかもしれない」って思っていた。今回の再選挙のそもそもの発端が、13年前に橋本知事が初当選した時の選挙資金問題を巡って県議会と対立し、県議会が辞職勧告決議案を採択したことだから、状況的には非常に厳しい所からのスタートだった。そして、橋本知事が説明責任をきちんと果たしたかと言えば、ちょっと疑問があり、何が本当なのか正直言って分からない。なんとなくグレーな感じだった。
それに加えて、今回は、去年の選挙の時も対立した自民党や公明党が、全面的に対立候補を応援した。対立候補は去年と同じく、松尾前高知市長なんだけど、去年の選挙の時は自民党や公明党の県本部は推薦したが、党本部の動きは鈍かった。それが今回は、自民党本部からは武部幹事長や麻生総務相や安部副幹事長らが応援にかけつけるなど、党を挙げての総力戦となった。もちろん、橋本知事の最も強敵である県職員組合を中心とする社民党も反橋本だ
このような逆風のなか、橋本陣営は、共産党による応援以外は、相変わらずの草の根運動しかなかった。「組織力」対「草の根」の対決は5回連続だけど、これまででも最も厳しい戦いであり、「もしかしたら危ないかもしれない」って思っていた。

しかしっ!橋本知事の支持は衰えていなかった。この逆風にもめげず、見事に勝利を勝ち取った。県民は旧来勢力の陰謀に騙されなかったのだ。
そもそも、今回問題となった選挙資金問題は、昨年の知事選の時にも問題になっていたのだ。旧来勢力は、その時すでに、その批判キャンペーンを繰り広げていたのだ。それでも高知県民は橋本知事を支持し、かつてない強敵対抗馬であった前市長を破ったのだ。それを今になってもしつこく蒸し返して辞職勧告決議をするなんて、あまりにも県民をバカにした行動だ。県議会の愚劣な行動に怒った県民は、組織の総力を挙げて橋本県政を潰そうとする旧来勢力に打ち勝ち、見事、5選目の勝利を勝ち取ったのだ。(なんだか、新左翼の宣伝文章っぽくなってきたなあ)


「橋本知事になっても良くなった事なんか全然ない」
なんていう批判も多いが、それは認識が甘い。この13年間に、遅れていた高知県の基盤整備は非常に進んでいる。鉄道高架にしても空港滑走路延長にしても外洋港開港にしても高速道の延伸にしても、他の知事だったら、何十年もかかったと思う。それが分からなくて批判している人は、井の中の蛙と言えよう。日本という国の中で「高知県が置かれた立場」が分かっていない。自分こそが世界の中心だ、という自負心は、坂本龍馬の心意気にも通じる素晴らしい気概ではあり、そういう気概の無い香川県人からすると羨ましい限りだが、でも、だからと言って、放っておいても高知県が発展するとは考えてはいけない。何もしなければ、高知県なんて誰にも相手にされず、寂れていくばかりだ。橋本知事の力があったからこそ基盤整備が進んでいるのであって、普通の人が知事をやっていたら、高知県なんて相手にされずに取り残されたままだよ。せっかく力のある人が知事になってくれているのに、それを利用しないのはもったいない。それとも、それくらいは分かっているけど、自分たちに個人的な利益が落ちないから反対しているだけなのか。
まあ、反対する人は何に対しても反対はする。よくあるのが「原子力発電所が出来れば地域が発展すると言ってたくせに、人口は減り続けるし、全然発展しない」なんていう批判だが、これも勘違いか悪意の詭弁だ。そういう地域では、もし原子力発電所が立地しなかったら、人口減少は、そんな生やさしいものではなく、地域が崩壊の危機に陥るだろう。発電所が出来たから、緩やかな人口減少にとどまっているのだ。

そもそも、旧来勢力が橋本知事に反対するのは、経済状況が改善されないからではない。議会が反発するのは、橋本知事が裏取引を許さないからだ。旧来型の政治家は、裏で根回しをする。裏で根回しするということは、特別な相手にだけ利益をもたらすことを意味する。だから裏で動くのだ。表で堂々とはできない話だ。旧来勢力中は、橋本知事の県政では、自分の特定の支持者にだけ利益が及ぶような裏取引をできないため、何かにつけて反発するのだ。とても単純な対立構造だ。
13年前の初当選の時から、旧来勢力は圧倒的大差で負け続けてきた。古い政治体制に危機感を抱いた女性達の草の根選挙の勝利の連続である。そして、今回も、県民は古い議員達には騙されなかったって訳だ。

県議会の嫌がらせの辞職勧告決議に対抗して知事を辞職した事についても批判はある。「あれは単なる嫌がらせというか意見表明に過ぎないのであって、本当に辞めてどうするんだ」というような声も多かった。ただ、あの状況で職にとどまっていたら、何でもかんでも議会に反対ばかりされて政策が実現できない状況が続いていただろう。再度、県民の審判を受ける事により、議会に対して強い姿勢で臨めるというものだ。「なんでもいいから知事をする」のが目的ではなく、「県民のための仕事をする」のが目的なら、辞めてやり直して良かったと思う。

県職員労働組合の委員長は、「職員の意識改革を叫んで13年たつが、全然変わらない。13年間も叫んで駄目というのは、叫んでいる方に問題があるんじゃないか」なんていう、とんでもない事を言っている。自分たちが絶対に態度を変えようとしていないだけなのに、相手が悪いように言っている。この神経は、いったいどうしたことか。まさに泥棒の屁理屈だ。
社民党系の県職員組合が保守の松尾前市長を応援するのは、自分たちの言う事も聞いてくれるからだ。自分たちに都合が良いからだ。橋本知事に反発している県職員組合は県民の事なんか考えていない。自分たちの組織の事だけを考えて、市民の事なんて考えない役人が多いのは、国でも県でも同じだ。
なんだかんだ偉そうに言いながら、こういう姿勢を見るにつけ、社民党も、本当に古い体質の政党だ。市民の方を向かずに、自分たちの支持組織の立場しか考えていない。社民党はそういう政党だ。早く絶滅してくれ!


ところで、同じ日に、栃木県知事選挙もあった。そして、その対立構造が全く同じだったのだ。偶然にしても面白すぎる。
現職の栃木県知事は、新人で臨んだ前回の選挙で、組織力で圧倒的有利だった6党相乗りの現職に草の根選挙で対抗し、小差ながら勝利し、長野県知事に続く無党派知事として注目を浴びた人だ。橋本知事と同様に、旧来勢力に対抗し、ダム中止や行財政改革などの実績を上げてきた。しかし、旧来勢力は総力を結集して県勢奪回を目指し、対立候補として、高知と同じように前宇都宮市長を立て、全力をあげて戦った。本当に高知と全く同じ展開だ。
しかし、その結果は、まるで正反対だった。自民党と公明党が全力を上げた前市長が現職知事に勝ったのだ。なぜかしら。なぜだろう。高知と栃木と何が違っていたのだろう。負けた現職知事側は「物量作戦に負けた。政策論争ができず残念」と語っているが、それは高知も同じようなものだ。

冷静に選挙結果を総括すると、結局は、橋本知事の個人的魅力の勝利であろう。対立候補の松尾前市長との魅力の差である。いくら組織の総力をあげて戦っても、松尾氏は個人的魅力で橋本知事に勝てなかった、ということだろう。確かに、県議会や県職員の強烈な反対にあい、改革はなかなか進んでいないが、それでも「旧来型の密室政治を打破してくれる」という期待は依然として大きい事が示された。いくら旧来勢力がわめき散らしても時代は元には戻せないのだ。

何にせよ、改革派知事が再選されて良かった。これで高知県が古い体制に逆戻りする危機から逃れられた
でも、今回の事は反省しなければならない。意味の無い二年連続の知事選挙なんて、本当にバカらしいことだ。こんな選挙に巨額の税金が投入されるなんて、ただでさえ貧乏で財政危機が叫ばれている高知県で、全く無意味な出費だ。こんなバカげた事はもう止めにして、今後は、行政は力を合わせて県勢の発展に全力を尽くして欲しい。

(2004.11.29)



〜おしまい〜





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