L&G 破綻

〜 騙される方が悪いんだってば 〜



L&G(エル・アンド・ジー)という健康食品販売業が警察の一斉捜索を受けている1000億円を超える詐欺事件らしい。
まことに不勉強で、このL&Gって会社について今までほとんど知らなかったんだけど、今回の一斉捜査に関する報道を見ると、こらまた、とんでもない詐欺ですなあ。5万人以上から1000億円以上を集めたっていう詐欺の規模もすごいけど、その仕組みがすごい。例えば、1口100万円を出資すれば3ヶ月ごとに9%の高配当が得られるというものだ。年率に換算すれば36%という高配当だ。

(石材店)「銀行じゃ1%もなかなかつかないのに、すごい高利率ですねえ」
(幹事長)「て言うか、あり得ないよなあ」


年率36%なんていう高配当は、誰が考えても明らかにあり得ない利率であり、そんな話は詐欺以外の何ものでもないはずだ
。ただし、この配当金は、最初は現金で配当されていたようだけど、そのうち現金が足りなくなったのか、「円天」という独自の電子マネーでの配当に変更されている。こうなると、この円天の正体が問題となる。

この円天がらみでは、出資者が10万円以上を預けると、同額分の円天が受け取れるっていうコースもある。この同額の円天は、一度っきりじゃなく、毎年、同額が振り込まれる。つまり、10万円預けると、毎年毎年10万円分の買い物ができるって訳だ。L&Gでは、これを「使っても減らないお金」と言っている。

(石材店)「『使っても減らないお金』ですか・・・」
(幹事長)「普通に考えてもあり得ない仕組みだけど、『使っても減らないお金』なんてキャッチフレーズ付けたら、
       ますますあり得なさが露骨に出て、怪しさ100倍で、誰も信じないと思うのだけど」


しかし、なぜか、信じる人がいっぱいいて、人気を博していたようだ。円天は、もちろん一般には使えない勝手に作った通貨だけど、全国で開催する会員限定のバザーや、インターネットサイトの円天加盟店で販売される家電製品や健康関連商品、日用品、食料品などと交換できていたのだ。なので、これがうまく回っているうちは、誰も被害に遭ったとは思わないので、問題化しなかった。
単に異常な高配当で金を集めるだけなら、昔からよくある詐欺に過ぎないんだけど、この円天っていう仕組みで騙くらかしたところが、この詐欺の画期的なところだ。

L&Gは波和二会長(74)という人がやっているんだけど、この人は「円天は使っても減らないお金。円天が全国、世界に普及すれば、格差のない世界が訪れる」なんていう訳の分からない理想郷建設を力説している。「使えば減る、という文明社会の迷信を打破する」んだそうだ。「使えば減る」ってのは迷信じゃなくて、自明の自然の摂理だと思うんだけど、このおっさんは「円天が世界に普及すれば、地域経済の破綻や年金問題、貧富の差が解決し、戦争のない世界が実現する」と言っている。お金が自然にどっかから沸いてくるんなら、そうだろうけどね。
こんな事を言ってると、それまで騙されかけていた人でさえ「このおっさん怪しいぞ」って思うはずなんだけど、なぜか大勢の人が騙されている。う〜ん、不思議だ。

もちろん、いくら円天なんていう独自の電子マネーを使っているとしても、毎年毎年同じ額の配当をするのは不可能だ。当然、カラクリがある。円天で商品を販売する加盟店は、円天での売り上げの額面の25%を現金として受け取っていた。つまり、原価は売値の25%だったということだ。これじゃあ加盟店は赤字になっちゃうので、逆に、本当の原価の4倍の売値を付けていたらしい。つまり、円天で買い物をした会員たちは、普通の価格の数倍の値段で買っていたことになる。なので、10万円分の円天をもらっても、実際の購買力は数分の一に過ぎない。ざっと言って36%の配当と同じくらいのレベルだ。

とは言え、はやり36%は高配当だ。常識はずれの高利率だ。冷静に考えれば、怪しいと思うのが普通の人間だ。最低限の知性があれば、疑問を感じるはずだ。それなのに、何万人もの人が騙されたのだ。これが僕には信じられない。
もちろん、この事件の主犯の波会長は、詐欺の才能があるのだろう。

波会長は昭和40年代後半に「国内初の本格的マルチ商法」とも呼ばれるAPOジャパンという事業をやり、自動車の出力をアップさせるという装置などを約25万人に販売した。もちろん、マルチ商法なので、当然のように最後は破綻し、購入した高校生が自殺するなど社会問題化した。ところが、この事件では捕まらず、今度は別の会社を立ち上げ、「水道水をミネラルウオーターにする」という鉱物を全国の薬局に売り込み、薬局店主から数十億円分の手形をだまし取った。さすがに今度は、詐欺で実刑判決を受けている。しかし、これにも懲りず、出所後、昭和62年にL&Gを立ち上げたのだ。
このL&Gは、設立当初には、今年1月に詐欺容疑で逮捕された健康食品会社リッチランドの佐伯社長が在籍していたし、同じく巨額詐欺事件を引き起こした経済革命倶楽部の元幹部もかかわっている。リッチランドと言えば、沈没船引き揚げ事業などによって利益還元するっていう、これまたあり得ないホラ話で1万人から500億円もの巨額を集めた詐欺会社だし、経済革命倶楽部は「未常識経済理論」なんていうトンデモ理論を主張して1万2千人から350億円を集めた詐欺団体だ。いずれの詐欺事件も、とてつもない巨額を集めているのだけど、その中心人物達は仲間同士なのだ。この世界って、広いようで、狭いのかもしれない。

とにかく、他の詐欺のボス達と同様に、この波会長も周囲から「波教」とあがめられるほどカリスマ性があり、自分でも「波和二が法律です」なんて言ってた。最低限の知性がある人間が冷静に聞けば、明らかに怪しいと感じる投資話に、こんなに大勢の人が騙されるんだから、話し方がうまいのは事実だろう。
エジソンも元々はペテン師といわれていた。新しいことをするときは賛成派と反対派に分かれる。共鳴する人はぜひ参加してください」なんて言って会員を募っていたらしい。あるいは、「アラブの石油王が金を貸してくれる」なんていうホラ話も平気でしていたようだ。「アラブの石油王」なんて言葉が出てきた時点で、冷静に考えれば、明らかにおかしいんだけどね。

この手の詐欺によくあるやり口だけど、高級ホテルを会場にしたり、有名歌手を招いた会員向けコンサートを開催したりして、会員を信用させていた。出演者には細川たかし、小柳ルミ子、小林旭など、歌謡界の大御所たちが名前を連ねている。ま、この人たちは、金さえ出せば詐欺だろうがヤクザだろうが出演するので、責めるわけにはいかないが。
ただし、元警視総監で日本盲導犬協会の井上理事長が顧問になっていたのは、ちょっと問題だろう。本人は「盲導犬協会に協力すると言われて引き受けたが、具体的協力がなかったため辞任した」なんて言い訳しているが、軽率もいいところだ。

まあ、しかし、いくら話がうまかろうが、豪華な舞台を用意していようが、あくまでも本質的にはあり得ない儲け話であり、そんなものを信じる方が圧倒的に悪い。もちろん、詐欺師が悪いのは間違いないが、騙された方も圧倒的に悪いんだから、偉そうに被害者づらするのは止めてもらいたい。こんなアホな詐欺に騙された自分が恥ずかしいと思わないのかなあ。
新聞なんかは、なぜか騙されたバカ共を非難することなく、同情的に報道しているが、具体例を見ていると、バカらしくなる。東京の有名ホテルで開催された説明会に参加したら宿泊料もフルコース料理もタダだったので信じたという自営業者は数千万円が戻ってこなくなったとか、妹に勧められて数百万円を投資してしまった主婦は妹との関係が悪化したとか、アホな話ばかり。こんな被害者に同情する余地はない。まったく無い。

以前にも、ジー・オー・グループというネズミ講の事件を取り上げたけど、これまで度々似たような巨額の詐欺事件が起きて社会問題化し、大きく報道されてきたのに、相変わらず騙される人が後を絶たないのは、一体どういう事だ!?
健康食品販売の「リッチランド」やIP電話事業の「近未来通信」も、全部似たような構造だ。確かに、IP電話事業だとか、今回の電子マネーとか、新しい技を使っているのは目新しいところだ。しかし、どんな小道具を使おうが、どう考えてもあり得ないような高配当を約束しているのは同じだ。

騙される人の条件を整理すると、
 @金がある
 A欲が深い
 B知能が低い

の3条件となる。このうち1つでも欠けると被害は受けない。
金が無ければ投資しようがないし、欲が無ければ金があっても銀行に預けておくだろう。そして、いくら金があって欲が深くても、小学生レベルの知能があれば、こんなバカげた詐欺には騙されないだろう
こんな幼稚な詐欺に騙されるような人は、金を持っていてもロクな使い方はしないだろうから、金をだまし取られても仕方ない。

(2007.10.20)



〜おしまい〜





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