山中教授の大阪マラソン断念

〜 もっと科学技術に予算を! 〜



若くしてノーベル賞を受賞して一気に人気沸騰の京都大学の山中教授だが、彼はマラソンランナーでもある。関西が地元なので、去年の大阪マラソンや今年の今日とマラソンにも出場している。で、その記録なんだけど、てっきりおちゃらけで走っているだけかと思っていたら、これがなかなか速いのだ。去年11月の大阪マラソンは4時間29分53秒とのことだから、まあ市民ランナーとしては標準的なレベルと言えるのだが、実はこれは約20年ぶりのフルマラソンてことで、それを考えると、ちょっとすごい。そして、今年3月の京都マラソンは4時間3分19秒てことで、これは、もう、かなり速い。あと少しでサブフォーだ。

(石材店)「幹事長は、かないませんね」
(幹事長)「会社を辞めてプロランナーに転向しない限り不可能なタイムだな」


ま、プロランナーに転向する方がはるかに不可能ですけど。

このように予想外に速い山中教授だが、今年の大阪マラソンへの出場は断念したと発表した。これまでも忙しかったが、ノーベル賞を取った後は、さらに忙しくなり、もう出られなくなったということだ。大会に出るだけなら数時間で済むので、時間がとれないことも無いだろうが、フルマラソンに出るだけの練習時間が取れなくなったようだ。ハーフマラソンくらいならまだしも、フルマラソンを走ろうと思えば、どんなプロでも、それなりの練習が必要だ。

山中教授といえばノーベル賞を取る前から超多忙だっただろうに、よく練習時間が取れていたなあ、なんて感心もするが、走ることは絶好の気分転換になるのに加え、資金集めの意味もあった。今年3月の京都マラソンの時は、山中教授は「完走するので寄付してほしい」と呼びかけ、1000万円以上の寄付金が集まったらしい。山中教授はマラソンに限らず、これまでも何かにつけて寄付を募り、これまで数億円以上の資金を集めてきたらしい。

なぜ、そこまでして寄付金を集めるのかと言えば、研究費が足りないからだ。世界での熾烈な研究競争に勝つためには、多額の研究費が必要なのだ。彼の研究所には250人超の職員がいて、それを維持するだけでも年間10数億円の人件費が必要になる。最新の機器代、マウス飼育費などのほか、海外で特許を取るためのお金もいる。iPS細胞で期待される再生医療は、日本はアメリカの1/10の予算しか出ないと言われている。

それでも山中教授は特別だ。京都大学に来る前の奈良先端科学技術大学院大に准教授として採用されてから、山中教授は国の支援に助けられてきた。まだ無名の研究者だったが、文科省所轄の科学技術振興機構を通じて総額3億円もの研究資金提供を受け、そのおかげでマウスや人のiPS細胞の作成に成功し、世界を驚かせた。そして、2008年からは、さらに5年間で約20億円の特別プロジェクトを任せられた。研究成果が素晴らしかったからだが、日本の中ではかなり優遇されてきた。

ところが、運悪く、史上最悪の鳩山バカボン政権が発足して、科学技術予算が容赦なく事業仕分けの対象になってしまった。山中教授のプロジェクトも事業仕分けの候補になってしまった。当然のことながら山中教授は事業仕分けを強く批判したが、自民党政権時代は2700億円あった内閣府の最先端研究開発支援プログラムは1/3の1000億円に大幅減額され、山中教授のプロジェクトも一時は危機的状況におかれた。科学技術開発に対する事業仕分けは、次世代スーパーコンピュータ予算に対して「なぜ世界一でないと駄目なんですか?」なんてトンチンカンな発言をしたクラリオンガールの蓮舫に象徴されるように、日本がとるべき進路と言うか、それしか生きていく道が無い科学技術立国への道を、自ら否定する民主党白痴内閣の亡国政策だ。最先端研究開発支援プログラムの予算なんて、年間10数兆円もの高齢者医療費や年間4兆円に達する生活保護費に比べたら桁違いに少ない。怠け者どもにくれてやっている生活保護費を少し減らせば、いくらでも捻出できるだろう。

ノーベル賞の受賞により、民主党政権は人気取りのため特別に10年間で300億円の研究助成を行う方針を決めたが、ノーベル賞を取ってからでは遅い。そういう素晴らしい研究が芽を出すまでが本当に大切なのだ。て言うか、額が少ないんだってば!

(2012.11.5)



〜おしまい〜





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