女子駅伝で四つん這いリレー

〜 そんなに騒ぐ事なのか? 〜



先日開催された第4回全日本実業団対抗女子駅伝予選会で、岩谷産業の飯田選手が骨折して倒れたが、その後もレースを続行し、200mほどの距離を四つん這いで這ってタスキをつないだ。テレビで見ると、なるべく膝が痛くないように白線の上を這っていたが、それでも両膝が擦り剥けて血だらけになっていた。このため、なぜ中止させなかったのか非難囂々だ

非難囂々しているのは、何でもかんでも無責任にヒステリックに叫き立てるマスコミと、それを見た何も知らないおばちゃん達だ。誰を非難しているかと言えば、大会事務局だ。岩谷産業の監督は、各チームの指導者が集まる監督室でライブ映像を見ていて、すぐに大会役員に中止を要請したらしいが、監督室は現場から遠く離れていたため、瞬時には現場に要請が伝わらず、結局、誰も止められないまま次のランナーにタスキがつながった。そういう事もあり、監督は非難の対象にはならず、もっぱら大会事務局が連絡体制の不備という事で非難されている

しかーし!大会の運営現場を考えると、事務局を非難するのは理不尽だ。現場の係員は当然ながら、ランナー本人に対して意思確認をしている。そして、もちろんランナー本人は続行の強い意志を表したそういう状況で無理矢理ランナーを制止して止めさせる権限は無い。監督が側にいて、直接、本人を説得して止めさせるのならともかく、遠く離れた場所にいる監督から中止要請があったからと言って、それを遠くの現場に即座に伝えることなんて難しい
何でもかんでも無責任にヒステリックに非難するマスコミや、何も知らないおばちゃん達は「監督の要請なんか待たずに即刻、強制的に止めさせるべきだ」なんてトンチンカンな事を言ってるが、それは、あまりにもランナーを無視した発想だ。大会事務局が勝手に止めさせる訳にはいかない。だって、ランナーの体調がどれくらい深刻なのかは分からないからだ。口から血反吐を履きながら這い蹲っているのならともかく、しっかりした足取りで這っているのだ。強制的に止めさせられる状況とは言い難い。
何も知らないおばちゃん達は、あんなにしてまで続行するランナーは、すごいド根性を持っているって思うだろう。そして、それを強いる雰囲気のあるチームやマラソン業界を前近代的な悪い体質だと考えるだろう。
しかーし!一般的に考えて、あの状況で自ら走るのを止めるランナーなんていないだろうと思うド根性でもなんでもない。ごく普通の発想だ。

(ピッグ)「すぐに途中リタイアする幹事長の言葉とは思えませんね」
(幹事長)「それとこれとは事情が違うぞ」
(支部長)「私らは、ちょっとしんどくなったら何の抵抗もなくレースをリタイアできる勇気を持っているんだぞ」
(ピッグ)「単に根性が無いだけですよね」


私や支部長が簡単にリタイアするのは、大して意味も無いレースだからだ。例えば過去11回のうち2回リタイアした徳島マラソンなんて、もうエントリーするのも止めようかと思っているくらい、私にとってはどうでもいいレースだ。
しかし、これが13年も応募しているのに、まだ1回しか当選していない東京マラソンや、同じく競争率の激しい大阪マラソン、京都マラソン、神戸マラソンなんかだと、どんなに体調が悪かろうが、どんなにタイムが悪かろうが、途中でリタイアするなんて発想はない。どんなに足が痛くなっても、歩こうという発想すらない。絶対に最後まで走ってゴールしたい。我々のようなどうでもいい市民ランナーですら、大事なレースになると絶対に完走したいのだ。ましてや、走るのが仕事の実業団の選手にとって、晴れの舞台である全国大会で途中棄権するなんて発想は皆無だろう

しかも、残り僅か200mの話だ。これが、まだ何kmも残っているのなら、リタイアする選択もあるだろう。でも残り僅か200mだ。200mなんて、すぐ目の前だ。すぐ目の前に次のランナーが待っているのが見えているのだこれで途中棄権するような人間は最初から長距離ランナーにはなっていないこの全国大会に向けて長い間、死ぬほど練習を積んできた選手だ這って200m進むくらい何でもない。血が出ていると言っても、しょせんは表面的な擦り傷だ。それ自体が致命傷になる訳ではない。
繰り返し言うけど、彼女が特別にド根性がある訳ではない。特別にチームのプレッシャーを感じてた訳でもない。ランナーなら誰でも共通する普通の発想だ。悲壮でもなんでもない

女子駅伝と言えば、去年1月の第35回全国女子駅伝は雪が舞う京都市内で行われたが、何も分かっていないおばちゃん達から「なんで、こんな激しい雪の中を走らせるんだ?可哀想じゃないか!」なんてトンチンカンな批判が出た。自分たちはぬくぬくとコタツでミカン食べているから、雪の中を走る選手を可哀想だと思ったようだ。
もちろん、あの程度の雪で中止になるなんて発想は、常識的なマラソン関係者の間では、あり得ない。雪が降ってると言ったって、前が見えないような猛吹雪でもないし、雪が積もって路面が滑るほど降っている訳でも無い。選手のおでこには雪が着いていたが、走る障害になるようなものではない。真冬の京都だから、雪が降ってても降ってなくても寒いのは当たり前だ。
選手だって、走るのを止めたいなんて思ってる選手は一人もいないだろう。せっかくの晴れ舞台の全国大会だ。たかが雪ごときで止めたいなんて思うはずがない。それまで死ぬほど練習してきているのだ。たかが雪くらい何でもないはずだ。実際に、走り終わった選手からは「走りきることができてよかった」という感想が出ていた。当たり前すぎる。

何も考えずに漫然とテレビを見ている運動不足のおばちゃん達は、自分勝手に的外れでトンチンカンな批判をするのは控えて欲しい

(2018.10.22)



〜おしまい〜





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