エンデューロのススメ　　　Clubキントウン　記

「天は人の上に人を乗せて人を造れり」と言えり。されば万人の単車に乗るを好めるは天に与えられたる性にして、単車に貴賎の差別なく、エンジンの動力とタイヤの駆動をもって天地の間にあるよろずの道を走り、自由自在、互いに趣味の妨げをなさずしておのおの安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。

されども今、広くこの業界を見渡すに、イカ釣り船の如き電飾スクーターあり、化けの皮かぶせたばかりのレトロバイクあり、目先のおどろしきデザイン受けのみ狙いしエヴァンゲリヲン風バイクあり、また女子供の玩具に等しきもあり、その有様雲なくして泥ばかりなるはなんぞや。

その次第はなはだ明らかなり。『本田宗一郎語録』に、「バイクは走らなきゃ意味ないだろう、なんのためのバイクだと思ってんだ」とあり。さればまともなる単車とおろかなる単車との別は、単車乗りの真に走るを好むと好まざるとによりて出来るものなり。

世界一流の単車乗りも、下々の者より見ればその技及ぶべからざるようなれども、そのもとを尋ぬればただその人のひたすら走りを好めるによりてその相違も出来たるのみにて、天より定めたる約束にあらず。されば前にも言えるとおり、単車に貴賤の別なし。ただ走りを好み、道によく学ぶ者は真の単車を生む真の単車乗りとなり、学ばざる者はおろかなる単車を生むあわれなるモドキとなるなり。

されば今、かかる実なき単車モドキは捨て置き、もっぱら勤むべきはエンデューロなり。たとえば、体重移動を習い、アクセルの操作、クラッチの操作、斜面の斜度、距離の目安等を心得、なおまた原点に返って心得るべき安全運転の箇条はなはだ多し。単車乗りたる者はみなことごとくたしなむべきイベントなれば、この心得ありて後に、ツーリングライダー、旧車ファン、ロードバイク乗りおのおのその分を尽くし、銘々の趣味に邁進し、身も独立し、家も独立し、天下国家も独立すべきなり。

人誰か&三ない運動を好みて単車を憎む者あらん、誰か単車の排ガス規制撤廃を祈らざる者あらん、誰か自転車ブームよりの侮りを甘んずる者あらん、これすなわち単車乗りたる者の常の情なり。今の世に生まれ単車を愛する心あらん者は、エンデューロに基づきてまずバイクを整備しマナーを厚くし広く交流を深め、銘々の愛車に相応すべきほどの運転技術を備えて、メーカーはそのニーズを受けてまともなる単車を増産し、諸民は排ガス規制と日教組の支配を受けて苦しみなきよう、互いにその所を得てともに全国の単車文化を護らんとするの一事のみ。今余輩の勧むるエンデューロももっぱらこの一事をもって趣旨とせり。