マヌスのホテル


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 マヌスでは、マヌス島ロレンガウのハーバーサイドホテルに泊まった。
 このホテルは、名前の通り、海岸のすぐ側にあり、足元で浪の音がする感じであった。時化の時は、どうなるのかと心配したが、よく見ると、海中は珊瑚礁らしく、かなりの沖合まで浅瀬が続いていた。
 外の通路など、赤・青・黄とカラフルな電灯で飾られており、観光ホテルのような雰囲気なので、千々輪さんに訊ねたが、この地域に観光的な要素はないとのことである。
 私たちの居室は、2戸1棟タイプである。これは、感じの良いホテルだと、気をよくして洗面所に入って見ると、水の方の蛇口にハンドルがない。湯の蛇口だけで洗面器を一杯にしたら、手が付けられないくらいの温度である。これではたまらんと、千々輪さんに連絡し、ホテルの係員に来て貰った。
 やってきたホテルの係員は、おもむろに、これを使えば支障無く使えるという。何を使えと言うのかと、よく見てみると、洗面器の下にあるバルブ、いわゆる元栓である。
 私はその智恵に感心した。修繕しないで、毎日こういう説明をして、客を泊めているのかと、あきれはしたが、不思議と腹は立たなかった。
 ここでも、石鹸は使わないで、シャワーで汗を流すだけにした。後で聞いた話では、塩水でも泡の立つ石鹸はあるという。よく考えてみると、私たちは日本から持参した石鹸で泡が立たないと言っていたのだった。ホテル備え付けの石鹸なら泡が立ったのかも知れない。

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