・手術当日-前編-
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<2004年1月22日>
旦那と二人して仕事を休んだ。
朝になってからも きなこの食欲は戻らず、かろうじて半割りのイチゴをひとつ口にしただけだった。じりじりとしながら11時が近付くのを待ち、10時45分に家を出た。
病院までは車で10分ほど。
キャリーの中でも 絶えず尿意に襲われているのだろう。
何度もオシッコを出そうときばっているのが見ていて辛い。
撫でながら「もう会えないかもしれない」と思うと涙が止まらなかった。
休診日のため病院の前では看護婦さんと、最近入ったばかりの若い女性の先生が待ってくれていた。
先生に会い、昨夜からほとんど何も食べていない事をお話する。
キャリーからきなこを出してみると、敷いていたバスタオルのあちらこちらに、血尿というか、何とも奇妙な色の尿が点々とついていた。
「かなり厳しいけど、このままやったら助からんから、やってみよう」
ともかく先生を信じてお任せするほかない。
以前にも聞かせて頂いたが、もう一度手術の説明を聞いた。
鎮静剤を注射したあと、「何かあったらすぐに連絡します。上手くいったら連絡はしませんので1時半に迎えに来てあげて下さい。」と看護婦さんに言われ、後ろ髪を引かれながら病院を後にした。
どうか電話が掛かってきませんように。
手術は12時過ぎには終わるとのお話だったので、12時半を過ぎた頃には、私にも旦那にも少し気持ちの余裕が出きてきた。迎えの時間には少し早いけれど、家にいても落ち着かないのでドライブがてら家を出る。市内を少し走って1時過ぎに病院へ。
駐車場で時間まで待つつもりだったが、居ても立ってもおられず 二人して病院へ。
「きなこくん まだ麻酔で寝てるけど大丈夫よ。会ってみる?」
看護婦さんが快く迎えてくださった。
きなこはいつもの診察台の上でなく、奥の手術室で 酸素マスクをしたまま力なく横たわっていた。 お腹にはネットをかけてあって傷は見えない。目の上にはガーゼが乗せてあり、隣に居た若い女医さんがそれを取ってくれると、目がトロンと開いたままだった。
「大丈夫でしょうか?」と聞くと、「少しずつ意識は戻ってきてるんだけど、まだ体を動かしたり、まばたきしたりはできないんですよ」とのお返事。目が乾燥しない様にクリーム状の目薬をつけて、ガーゼで覆っいるのだそうだ。
すぐに先生が来られて「もう次はよう切らんで、ボクは」と笑っておっしゃる。明るい声なのでホッと安心。
きなこの自発呼吸がしっかりしてきたので酸素マスクが外され、私と夫は先生の説明を受けるために診察室へ。
「石、見てみる?」
既に標本ケースに入っていた石を触らせてもらったが、それは予想外にずっしり重かった。
スカスカの軽石のような物を想像していたのに、河原に落ちていても不思議じゃないような本物の石だ。
重さは30グラムもあったそうで、体重50キロの人間に換算すれば、1キロの石を膀胱に抱えていた事になる。
よくこれまで頑張ってくれていたな、とつくづく思う。
そして、先生の説明を聞いてますますそう思った。
<長くなったので続く・・・。T-T>