もどるつぎへ                           
















































































































































































ストーンサークル













タマの封入







ラッキー前田さんの封入








藤原くんの封入


















遮光器土偶





































































































































































































































































































青池

タマとラッキー前田さん




























しゃこちゃんの前で
しゃこちゃんの前で






















































十三湖の前で記念撮影







































































































夷王山神社

神の道
神の道


1111111111111111111 1
                   
(体験談2002年6・7月号掲載)
             
超能力レポート・パート30!
                  
― 『十二湖エネ散策ツアー』 ―

                                 
       会員番号10686 玉川 芳伸


【プロローグ】

久しぶりの体験談です。昨年のアビエルト8・9月号の『塩竃神社正式参拝』から数えて、10ヶ月も
間が開いているのですネ。

その間一度だけ『佐太・出雲神社参拝』を書きましたが、この10ヶ月間という短い期間に、いや、
時間の存在しないエネルギーの世界にとっては、長くも短くもない事なのかもしれませんが…。
PH関西支部の分離独立劇、私個人のHP(ホームページ)の開設等々、とにかくいろいろな出来事
が起こり、その体験談も掲載されることは不可能となってしまいました。

しかし、八木橋くんと私の二人(やぎたまコンビ)のこと、もちろんその間もジッとしている訳もなくい
ろいろと遊んでおりましたし、この間に二人を取巻く環境も大きく変化していたのです。
言い方を変えれば、流れが大きく変わってしまったのです…。

その新たなる流れの中で、ようやく体験談をかけそうな出来事である今回の『十二湖エネ散策ツア
ー』が実現することになりました。

私のHPではこの間にもいろいろな出来事を書いてはいたのですが、それではパソコンを使用され
ない方にとっては不公平…。
やはり体験談はアビエルトに書かなくっちゃ…、そして一人でも多くの会員さんと共にこの不思議で
楽しいエネルギーの世界を共有するという体験談の本来の意味を考え、今回久々に筆を取らせて
いただきました。

どうかアビエルト誌上では久しぶりに書く体験談、、、みなさんも同じようにエネルギーを感じ、楽し
んでいただければ幸いです。


【どうして十二湖エネツアー…?】

それは私のHPの掲示板に、ある書き込みがあったことから始まりました。
室蘭に住む原田さん(PH会員)が、ご家族で北海道の道南地区、洞爺湖そばの『潮騒』に旅行を
し、楽しかったという、別段これといって何の変哲もない書き込みだったのです。
(原田さん、ごめんなさい…)

しかし、それを見ていた私は「あぁ〜、いいなぁ〜…。私も何処かの〜んびりと旅行したい…」と、羨
ましく思っていました。
“潮騒といえば八木橋くんの所からもそう遠くはない場所のはず…。そうだ!八木橋くんに尋ねてみ
よう…”と、朝の仕事の時間を待ち構えていたのでした。

それを察知したのか、その朝の『W遠トリ』の時に八木橋くんが、「玉川さん、原田さんいいねぇ〜
…。僕等もそろそろ何処かへまた行きますか?」と言い出したのでした。
「………。もう心をヨ・マ・レ・テ・ル…。」

そしていろいろとプランを考えている内に今度は、「いやぁ〜、実は潮騒、、、。ウチのカアちゃんの
実家のすぐそばなんだワ。ホントなぁ〜んにもない場所だって…。だから青森の十二湖へ行きませ
んか。うん、そうしましょう」って、話はドンドン最初のものとは掛け離れて行くのです…。

「えっ?それがどうして青森県の十二湖になるの…?」
と八木橋くんに尋ねると、
「いやぁ〜、玉川さんも知ってる、ある能力者の人から“十二湖は良いヨ。特に冬の十二湖が…。
いつか一緒に行きましょう。”って言われてたんだワ。だから十二湖ネ!」
と訳の分かったような分からないような話ではありましたが、そこは長年のコンビ、私自身も何とな
くその意味を理解し承諾したのでした。

私たち二人だけで行くよりは大勢で行った方が楽しいからと、まずは大阪の調整師前田さんにも声
をかけ、そのことを掲示板でも呼び掛けたところ、次々と応募があり、2月のPH大阪講習会の飲
み会でも参加者に声を掛け、気が付くと総勢40名という大所帯になっていました。

「おぃおぃ、こりゃぁ〜エライことになっちゃったヨ。こんなに集まるなんて…。どうする?」
と心配する私をよそに、「うん。40人…?大丈夫でしょ。行けばなんとかなるでしょ…」と、いつもの
大胆にして無神経な八木橋くんは、そんなことチットも気に掛けてもいない様子でした…。

その反面、
繊細にして神経質という、この見掛け上では全く逆のタイプに見えるコンビですが、今
思えば、実はこの時から既に十二湖ツアーに向けた試練と言うか、禊の旅が始まっていたのでした
…。

今でこそ書けますが、八木橋くんはこのツアーの話が出始めた頃に珍しく体調を崩していたらしい
のです。そしていろいろと環境にも変化が起きていたと後で語ってくれました。

そう言う私自身も酷く体調を崩していたのです。
去年の11月末から何ヶ月も続く原因不明の咳。
そして咳から来る腰痛、それが講じて遂には10年ぶりの『椎間板ヘルニア』の再発という起き上が
ることすらままならない状態にまでなってしまい、本当のところは『十二湖エネツアー』どころか4月
のPH東京講習会に参加する事さえ危ぶまれていたのでした。

このことを八木橋くんに話すと、「うぅ〜ん…。まぁ、玉川さんが行けると思えば大丈夫、きっと行け
ますヨ。行く必要がなければ行けないだけ、それだけです。ハイ」と、相変わらずクールな返答でし
たが…(笑)。

この頃には、“ナニかに、誰かに我々は試されている…”と内心感じるようになっていました。
“このハードルを乗り越えられるのか…”と…。
しかし、物事は考えよう一つで大きく変るもの。それが能力者であれば尚更のこと…。

それならば“ハードルを用意されたこと自体を喜ぶべきで、それを乗り越えることでエネルギーが働
き、そして気づきもあるのだろう…”と、結構毎日悩み苦しみながらも、そのエネルギー(流れ)を逆
に楽しんでいるもう一人の私がいたことも確かでした。

ツアープランは八木橋くんに全て任せ、私は応募されてくる人々の名簿作り、部屋割り、詳細予定
表作り等の雑務をこなし、着々と準備は進んでいきました。
と言いたい所ですが、そこは北と南に大きく離れて住んでいる二人…、エネルギーだけでは意志の
疎通を図るわけにもいかず、と言って我々にテレパシーが使える訳もなく、結局は全て電話で話し
合うしか手がなくて、二転三転しながら「もう来週だ。どうしよう…」と、時間だけが残酷に、そして着
実に過ぎて行き、気が付けば明日は函館に旅立つ日になっていました。

まぁ〜「ケ・セラ・セラ」で、なんとかなるでしょう。
八木橋くん的に言うと、「レット・イット・ビー」かな…。


【ストーン・サークルはいづこ…!!】

函館組みは、前日から函館入りしていた大阪の前田さんと高松からの私を入れて総勢15名。
当日の朝7時半に『JR函館駅』集合。
私はPH会員さん2名と待ち合わせをし、集合時間ギリギリでなんとか間に合ったのでした。
駅に辿り着くと、八木橋くん一家、前田さん、その他私たち3名以外の方々は既に集合しており、そ
れぞれがあらかじめ用意されていたチケットを手に7時45分発の『特急はつかり10号』で「イザ、
青森へ…」。

私と前田さんが向かい合って座り、それぞれの隣りは八木橋ジュニアたちでした。
初めての青函トンネルの旅、それも楽しみの一つでした。
青函トンネル、それはもちろん海底を通るトンネルとは言いながらも、車窓からその海中の様子が
見えるわけでは無いことを頭で理解してはいるものの、不思議なもので「魚が泳いでいるのが見え
るのかい?」と聞く人が大人も含めて結構いるということを八木橋くんから聞かされていました。

車中では前田さんといろいろエネルギー談義をしながら時間を過ごそうと考えていたのですが、気
が付けば八木橋ジュニアたちに恰好の遊び相手にされてしまい、青森駅に到着するまで遊ばれ通
しの「あっ」と言う間の2時間でした…。

9時47分青森駅到着。ホームに降り立つと、そこは最北の大地北海道とはまた違うエネルギー、
空の色も空気の匂いも北海道のものとは少し違っており、青森の土地独特のエネルギーが私の足
から心地良く身体中に流れ込んで来るのを感じるようでした。

既に駅には、もう一人の青森から参加する女性の方が待っておられ、これで16名。
それからレンタカーを手配しながら待つこと1時間、先発組みの藤原くんも金髪の頭で空港からバ
スで駆けつけてきました。
ところがもう一人の先発組みの川船くんがバスに乗っていないのです…。

待てども待てどもやって来る気配も無ければ私の携帯への連絡も無く(実はこの時ウカツにも、私
の携帯は伝言モードになっていたのでした…)、これ以上彼を待つ時間的な余裕もなくて、我々17
名は一足先に最初のエネルギー・スポットである『小牧野遺跡(ストーン・サークル)』へと4台のレ
ンタカーに分乗して出発したのでした。

八木橋くんのレンタカーを先頭に走るのですが、そこはいつもの我々のことでスンナリと事が運ぶ
はずも無く、出発して5・6分で既に4台のレンタカーは逸れ 、2台づつという小規模なツアーにな
ってしまっていたのです…(トホホ…)。

レンタカー屋さんで貰った見なれない地図を片手に迷いながら走ること30分、行けども行けども田
んぼ道…。
なんとなく道が違うような気配を感じ、思わずコンビニに飛び込み、そこで途中で道を間違えた事を
知らされてスッカリ自信と信用を無くした私は、今度は前田さん運転の車を先導に走り始めること
になるのでした。

迷いながらもようやく辿り着いた『小牧野ストーン・サークル』は、「本当にこんなところにあるの?」
と言うくらい人里離れた辺境の地にありました。
おまけにそこまでの道が狭くてクネクネと蛇行していて、ちょっとよそ見でもしようものなら道からタ
イヤがはみ出しそうで、運転していた私は「どうか対向車が来ませんように…」と心にずっと念じ続
けていたのです。

山道の悪路をユックリと走りっていると、突然ポッカリとなにもない空き地に抜け出たのです。
どうやらここが目的地らしい。その空き地にある駐車場らしき場所には、既に到着していた八木橋
・函館組の2台が待ち構えていました。
彼等がどうしてスンナリとこの辺ぴな場所にやって来られたのか、そちらの方が私には不思議でな
りませんでした…。
やはり八木橋くんは奥の手の『エネルギー・フーチ』でも使ったのでしょうか…?

急いで車から降り立つと、大地からは異様なほど強いエネルギーが涌き出ていました。
「こ、これがストーン・サークルのエネルギーか…?」
と、周りを見渡すのですが、一向にそれらしき風景が目に飛びこんでは来ないのです。
「へ…。何処にストーン・サークルがあるの…?」

と少し小高くなった丘まで上がっていくと、そこには草木も生えていない黒い大地が広がっていまし
た。そしてその異様に黒い平原に、白胡麻を天から振りまいたように白い石がポツポツと、まるで
出鱈目に作られた神の造形のように、何らかの意志を持って散りばめられ、そして置き去りにされ
ていました。

しかし、それは知らない人が見たらきっと素通りしてしまいそうなロケーションであることは確かでし
た。
後で八木橋くんに聞いた話しでは、先に現地に降り立った八木橋ファミリーは、そのストーン・サー
クルのど真ん中に立って、「ねぇ〜、パパぁ〜、何処にストーン・サークルがあるのぉ〜?」と尋ねて
いたらしいですから…。(笑)

その環状列石の中でも一際強いエネルギーを発している石があり、近づくとクラクラと目眩がする
ようでしたが、どうやらそれは一足先に八木橋くんがエネルギーを封入したらしいと聞き、納得する
のでした。

「あっ、この石はタマちゃん封入やって…。前田さんは、あそこにある賽銭箱の前の“馬頭観音”っ
て字の書いてあるやつネ。いや、前田さんは、あっちの十字架の墓のように盛り土がしてある石の
方がタイプかな…?」
「なんで俺はそういう怪しい石ばっかりなんやねん…」と、文句を言いたそうな前田さんを全く無視し
て、「藤原君はコレね…」と、もう既に誰が何処の石に封入するかを決めているようでした。
それぞれが石にエネルギーを封入すると、「ぼわぁ〜ん…」とエネルギーが暖かくて柔らかくなる人
、異常に荒くなる人、何も変化が起こらない人と様々で、「ふぅ〜ん…」と私はその一つ一つを関心
して見ていました。

特に前田さんの封入した墓石のような石は、不思議なことに石の周りの土が綺麗に十字架の形に
地面から盛り上がってきているのです。
「んぐっ!」と、前田さんが封入するや否や周りのエネルギーが一瞬に変化し、八木橋くんと私は同
時に「痛てっ!!ダメだわこりゃ〜」と叫んだくらいでした。
前田さんは、きっとそこに今から遡ること約四千年前(縄文時代後期前半)に眠りについた人々の
魂を、その意志に反して無理矢理に起こしちゃったんだろうというのが私たちの結論でした。

「かわいそうに…、なんてことするの…」と、私たちに叱咤された前田さんは、また封入をやり直し、
「よしゃっ、これでどや、大丈夫やろ!」って自信満々でしたが、もうきっと手遅れなんじゃないの…
?しかし、そんな大昔の“眠れる魂”を呼び覚ます前田さんの能力も、きっと只者ではないのだろう
と、そっちの方が私は関心してしまいましたが…。

その傍らで藤原君が全員の注目の中、まるで昔の香港映画の『キョンシー』のようなスタイルで、お
そらくこんなに大勢の前でエネルギーの封入をやらされるとは思ってもいなかったのでしょうが、恐
々とエネルギーを封入していました。

東京組みとの待ち合わせ時間がそんなに残っていないので、早々に次のエネルギー・スポットであ
る『石神神社』を目指すのですが、そこまでの道のりが更に悪路の山道。
現地の農家の老人に尋ねると「まだ雪が残ってるかもしれんから、その車じゃちょっと無理でない
の…。
それにココから6キロはあるヨ」と忠告され、ここは潔く諦めて、次の集合場所である青森駅近くの『
県立郷土館』へ向うのでした。

『県立郷土館』に午後1時頃に到着、ここで昼食を先に食べる者と見学を先に済ませる者に別れ、
東京組みの到着を待つのでした。
やきそばを食べ終えて、『郷土館』を前田さんとグルリっと一回りし、3階にある『郷土が生んだ名士
達』の写真展示コーナーで見知った顔を探すのですが、わかったのは『太宰 治』に『淡谷 のり子
』の2枚しかありませんでした。

そんな中、「あっ、仙台の沼倉さんが来てる…」と言う声が…。
「えっ、どこ何処…?」と、指差された壁に展示されている1枚のパネルには『寺山修司』の写真が
納まっていました。「………。(ガッカリ)」

1階奥に展示してある遮光器土偶はレプリカではない本物でした。それから出ているエネルギーが
半端じゃなく強くて、これを観るだけでもここへ来る価値があると、何故八木橋くんがココを集合場
所にしたのかを、その時やっと理解したのでした。

2時半くらいになって東京組みが到着、そのレンタカーは5台でした。
これで合計9台のレンタカーと、当日キャンセルが2名いましたので、総勢38名の参加者が全員集
まった訳です。
と書きたいところですが、やはり食事に行った人、郷土館を観る人に既に分かれていたので、全員
が揃うのを待つこともなく、「とにかく十二湖のサンタランドで会いましょう」と言い残して、先に出発
したのでした。


【神からの祝福…!?】


函館出発組みの4台に、ニューヨーク帰りの伊藤さんご一家を加えた5台が先に十二湖近くの宿
泊地『サンタランド白神』を目指すことになるのですが、4台でさえ逸れたココまでの道中…。
無事に5台揃って目的地に辿り着ける筈もなく、その心配は郷土館を出発して5分と経たない内に
的中してしまうのです。

前田さんの車を先頭にして、次ぎは私、そして八木橋ファミリー、次ぎが伊藤さんご一家、そして最
後が函館組みという順番で走っていたのですが、駅前から郊外へ抜ける信号辺りから八木橋・函
館組みの2台が後を付いて来なくなっていました。
と言っても、結構道が混雑しており、後続車が延々と繋がっている為に待つことも出来ず、結局こ
の3台で走ることになったのでした。

7号線をひた走り、右手に東北随一の霊山で、通称『津軽富士』として有名な『岩木山』を見ながら
のドライブとなりました。
私の車には、この春、無事に大阪の大学に進学したばかりの藤原君、函館から参加のハセガワさ
んと上野さんの女性会員さん2名、そして運転手の私を入れた4名です。

流石、青森は信仰の厚い土地なのか、その街道の至る所に小さな神社や祠等が大変数多く点在
し、その前を通り過ぎる度に私は、「痛てっ!」とか、「あぁ、あそこの神さんは気持ちいいわ…」な
んて遊びながら運転していました。
この函館から参加の女性2名もエネルギーには敏感なようで、私の言葉にいちいちうなずいている
のが、振り向いて見ているわけでは無いのですが何となくわかるのです。

ようやく『岩木山』が見えてきた辺りで、「よぉ〜し、それじゃぁ岩木山の神様でも呼んでみるか…」っ
て、その山からエネルギーを取り出したら、熱いわ、強いわ、動いてるわ…。
そのパワーの凄まじさに、運転している私はエネ当りするのではないかと心配し、思わず隣りに座
っているハセガワさんに「ホイ」って手渡したりしながら遊んでいたのですが、先程からのそんな私
たちのやり取りを後部座席でじっと押し黙ったまま見聞きしていた藤原君は、“この人たち大丈夫か
なぁ〜…”と、きっと不安に思ったことでしょう…。

延々と続く山越えの7号線を抜け出る前に、後から付いて来ている筈の伊藤さんご一家の車が見
えなくなっていました。と言っても、ここは一本道なので迷う筈もなく、先頭を走る前田さんにパッシ
ングで合図を送り、取りあえず路肩に駐車して、追いついて来るのを待つことにしたのです。
車窓から見える青森の空は天候が崩れ始め、さっきまでポツリポツリと遠慮げに振っていた小雨も
、今は何処からか湧き出てきた暗雲を応援するかの如く、徐々にフロントガラスいっぱいに広がり
かけていたのでした。

待つこと15分、携帯に伊藤さんから電話が入り、お子さんがこのクネクネと曲がる道のせいか、ど
うやら車酔いを起こしたらしく、脇道に駐車して休憩していると連絡がありました。
そして到着を待って、また3台で出発。
しかし、やはりあまりの長時間に渡る車での移動のせいなのでしょうか、その後、101号線に出て
からも伊藤さんはまた連いて来なくなっていました。

目的地まではまだ半分の距離を残していた為、それに目的地までは迷いようもない一本道なので
先に行くことにしました。
日本海に沿ってただ真っ直ぐ延々と走る101号線、いつの間にか先程まで降っていた雨も止み、
雲間から薄光がまるで“御来光”のように差込むようになっていました。
遥か遠くには水平線が見渡せ、「ここは、綺麗に夕陽が水平線に沈むのを見られる日本一の場所
」というのも納得でした。

しかし、そんな晴れ間が顔を見せたのもホンの僅かの間のことで、また小雨がポツポツと降ったり
止んだりを繰り返していました。

「これで虹でも出てきたら最高だネ!!」と、私はひとり言のように誰ともなく喋っていたのです。
「でも、この天気じゃねぇ〜…。明日の朝にでも虹が見られれば…」と、ハセガワさんが言い終わら
ない内に、「あっ!虹だ!!」と、私は大きな声で叫んでいました…。

確かに右手に見える日本海の水平線上に、まるで私たちの話し声が聞こえたのでしょうか、それ
に応えるかのように、いつの間にか大きな虹が掛かっていました。
突然の出来事に感動したのか、「虹は神からの祝福だから…」と、小さくつぶやくハセガワさん…。

「みんなヨカッタね。うぅぅ〜ン…。八木橋くんが虹にはオスとメスがあると言ってたけれど、この虹
は生命の源“母なる海”から出ているからきっとメスだネ。これで山側から虹が出たら、オス・メス揃
い踏みで最高なんだけどなぁ〜!!」
と、私はまた誰に話しかけるでもなく一人で興奮して喋っていました。

「…。僕、虹の先っぽを初めて見ました…」と、遠慮げに藤原君。
その藤原君は、よほど感動したのか、仕切りと海から出ている虹の先端を眺めていたのがヤケに
印象的でした。
そう言われてみれば、普段私たちが見る虹は、山やビル等に邪魔されて、その端から端までの全
貌を見ることは出来ないんですよネ…。

そんな感動の車中から、今度はハセガワさんが、「あっ、あれ見て!」と叫ぶ目線の先には、真っ
赤な色をした太陽が雲間から顔を覗かせているのでした。
しかも、その赤い太陽は雲から下半分だけ顔を見せているので、まるで「あっかんべ〜」と真っ赤な
舌を出しているように見えるのです。

「凄いねェ〜。あんな鮮やかに赤い色した太陽なんて…。神さんが舌出してるみたいで、感動もん
だねェ〜」
と、先程からの感動を次々と声に出して連発しているのがまた天に届いたのでしょうか、今度は海
とは逆の山側から大きな虹が空いっぱいに広がっていました…。
「あっ、出た!ほら本当に出ちゃったヨ!!」

私は、もうそのオス・メスつがいの虹を見られただけで、コレまでの運転の疲れも吹き飛ぶようでし
た。そしてその時私の脳裏には、「虹は神からの祝福だから…」と、小さくつぶやくような声が心地
良くコダマしていたのでした…。


【春なのにサンタ・ランド…!?】

長い長い道程を運転すること約3時間、ようやく日本海とは反対側の山の中腹に、本日の宿泊地
である『サンタ・ランド白神』がありました。
ゆるやかに登る山道に掛かっている橋の両脇の手摺には、確かにサンタクロースの人形らしきも
のが取り付けてありました。が、もう周りは暗くて折角のサンタさんもハッキリとは見ることが出来ま
せんでした。

「我々は何番乗りかな…?」と思っていたら、最初にはぐれ、その後追い抜かれた気配もなかった
のに、何故かまた八木橋くんが先に到着しており、
「風呂、風呂、タマガワさん。夕陽、夕陽…。夕陽が沈むのを見に“不老不死温泉”行きましょう。7
時半迄、7時半迄だから…。早く、早く…」って、クールな彼にしては何時になくハイで、片手に握り
締めたタオルを振り廻しながら元気にハシャイでおり、その口から飛び出す言葉は単語の羅列状
態で、意味不明なものになっていました。
そして、先に到着していた東京組みの若手メンバーを引き連れて、さっさと車で風呂に行っちゃっ
たのでした…。

「あぁ〜、八木橋くんもココに来て遂に壊れちゃったのか…」と、私は内心つぶやくのでした…。
もちろん私たちも“不老不死温泉”行きたかったです…。
しかし、まだ来ぬ後続の伊藤さんご一家も心配だし、その前に、このいっぱい立ち並んだログ・ハ
ウスの何処に泊まるのかも聞かされておらず、その上、宴会の買出し等を頼まれていたので、そう
そう全員が遊んでばかりもいられない…。

丸太造りのログ・ハウスは3棟が男性、4棟が女性と子供たちで分けられていました。
周りは陽が落ちた為に真っ暗で、その扉に書かれている号室番号も車内からは読み取れず、仕
方なく見慣れたレンタカーの駐車してあるログ・ハウスに荷物を運び込み、ようやく一安心するので
した…。

しかし、「ほっ」とする間もなく、疲れた身体に鞭打つように、前田さんと二人でレストランの支配人
に交渉し、冷えた瓶ビールを1ケースと地酒を2本調達し、私たちの宿泊するログ・ハウスまでセッ
セと運び込んだのです。

仲良く並んで散歩している塚本ご夫妻のすぐそばを、ビールケースを運びながら、その瓶ビールの
重さに、思わず前田さんと顔を見合わせお互いに、「タマちゃん…」、「前田さぁ〜ん…」、「俺達って
世間で言うところのパシリとちゃうのん…?」と殆ど同時に同じ言葉が口から出ていたのです。
それを近くで聞いていた塚本ご夫妻が、まるで私たちを労わるかのように静かに微笑を投げかけ
てくれるのでした…。(笑)

そうやってバタバタしている内に食事の時間がやって来て、午後の7時半、ようやく総勢38名の参
加者が全員顔を揃えることが出来ました。
この瞬間、私はやっと「ほっ」と一息つくことが出来たのですが、それはコレから始まる長い長いサ
ンタランドの夜のハチャメチャな出来事までの、ホンのひと時の安息でしかなかったことを後になっ
て思い知らされるのでした…。

バイキング形式の夕食が終わり、その足で近くにある『サンタ・ホール』に集合。
そこに先程用意した酒類を持ち込み、私の乾杯の挨拶も早々に、自己紹介が始まりました。
そして引き続き、『ヤギpapaに何でも訊いちゃえインタビュー』のつもりだったのですが、私はあまり
の疲労のせいか録音するのを忘れてしまったのでした。

みんなの質問も終り、最後に八木橋くんが今回のツアーの意味について話したのです。
「今回、みなさんがこの十二湖エネツアーに参加されたことに実は意味はないのです。
それは今日一日の行動を振り返って貰えばお分かりになると思いますが、エネツアーとは言いな
がらも、途中点在していた数々の神社にも立ち寄らなければ、エネスポットと呼ばれる場所にも、
函館組みを除いては何処一つ行きませんでした。

確かに神社や遺跡等で神さんを呼んだり、エネルギーを感じることも研鑚でしょう。
しかし、それだけが研鑚ではないのです。
このツアー、参加したからといって、何かが貰えるわけでもないし、能力がアップするわけでもあり
ません。最初に言ったように意味は無いのです。

ただ、こうやってみなさんが集り、十二湖、十三湖に行くことで、みなさんの身体の中で眠っている
細胞の一つ一つが振動を始めるのです。
だから十二湖、十三湖で、一人一人がその体内の細胞の振動を感じ、声を聞ければいいのです。
共振する細胞もあるかもしれないし、逆の場合もあるでしょう。
そしてそれは、今はわからないことなのかもしれません。しかし、わからないことを、何やってるの
かわからない時間を過ごすことの楽しさを知って欲しいのです。

私も調整を仕事にしていて、これはタマちゃんにも電話で話しましたが、この仕事やってて一番楽し
いのは、“わからん”と言うこの一言に尽きるのです。何をやってるのか、わからん…。何処まで行く
のか、わからん…。どうなるのかすら、わからん…。そう、この“わからん”ことが、実はエネルギー
の世界なのではないでしょうか…。

ここで、こうやってみなさんと集まり遊ぶことの意味も、わからん…。半年、1年と時間が経過するこ
とで、少しだけわかることも出てくることでしょう。
しかし、それすら“わからん”ことなのかもしれないのです。だから、結局なんにも“わからん”のです
。ハイ…」


「・・………。ふ、深い…。」
聞いていても
“わからん”、あんたのことは、もっと“わからん”と私は心で叫んでいました…。(笑)

『サンタホール』が10時までの約束だったので、後ろ髪を引かれるようにそれぞれがログ・ハウス
に引き上げたのかと心配する私をよそに、実はみんな別の場所に移動していたのでした。
そこはりーちくん、今村君、辻君、北川君、藤原君というヤングメン専用ハウスである62号棟に集
結していたのでした。

とっても疲れていた私と前田さんは取りあえず部屋に戻り、シャワーを浴びて、部屋着に着替え、
缶ビールで一服していたのでした。
しかし、隣りの62号に集結しているみんなから「酒が足りない…」と催促され、ひと時の休息もそそ
くさと、ビールケースをまた運ぶのでした。(ヤレヤレ…)

62号棟のドアを開けてビックリ…!!そこにはなんと殆どの人が集まっており、その部屋からこぼ
れ出んばかりのエネルギーとパワーに圧倒され、また酔いそうでした…。

その本来は6名が泊まれる2階建てのログ・ハウスに約30名もの人が集まっているのですから、
それはもう熱気ムンムンで、息が詰まりそうでしたが、なんとか私たちも潜りこむことに成功したの
です。

潜りこんだ時には既に2つのグループに分かれており、一方は八木橋くんを中心とした“酒飲み、
無礼講”グループ。
そしてもう一方は、静かにエネルギーを語っているのか…、“なんだか訳のわからない”グループで
した。

もちろん私と前田さんは静かなグループを選んだのですが、北川君の一際甲高い声で次々と「コレ
、どうですか?」、「コレって、アレですよネ」という質問攻めに、流石に気の長い前田さんも、「おぉ
〜い…。もう勘弁してくれよぉ〜」とギブアップ気味でした。(笑)

運び込んだお酒もドンドンと空き、八木橋グループの笑い声が表にまで響き渡らんばかりでした。
その面々を眺めると、りーち&つかささん、トモネさん&今村君、塚本さんご夫妻、ハセガワさんに
上野さん、坂野さんと細越さん、川船くんに藤原君、鎌田さんに水島さん、一人ポツンと生田さん。

途中酒が無くなり、宴会も中断したと同時に殆どの女性陣が引き上げ、2回目の宴会突入時には
、遂に八木橋グループは“一気飲み”が始まり、ジャンケンで負けた者がグラスに注がれた酒を一
気に飲み干していました。
「酒はダメなんです…」と言ってたはずの、りーちくんまでが結構飲まされたんじゃないのかナ…。

子供を寝かしつけてから少し遅れて参加した伊藤ご夫妻も加わり、そんな中、今宵一人の“宴会ヒ
ーロー”が生まれたのです。その名も“ヰクちゃん”こと、生田調整師…。
それまでは、大人しい物静かな人だナァ〜という印象だったので、その豹変振りにはみな唖然とし
てしまいました…。
が、これがまた八木橋くんといいコンビで、「おい、ヰクッ」とか、「なんでぃ、やつはしぃ〜」などと、
お互いがロレツの回らない舌で叫びあっているのです。(笑)

そんな喧騒をよそに、あくまで静かにエネ談義をしているこちらのグループ…。
こちらの面々はと目をやると、吉田さんに辻(たろう)君、古谷(アンディー)さんに森下(すずめ)君
、池田さんに狭間さん。
そしてただ一人、まるで“源 義経”の八艘飛びの如く、あっちこっちピョンピョンと場所を移動しな
がら「ケーン、ケーン」と“桃太郎”のお伴の雉のように甲高い声を発していた北川君も印象的でし
た…。

この全く違う二つのグループ…。そのコントラストと言うか、バランスがとっても心地良いと、私は一
人クールにお酒を口に運ぶのでした。
って言えばカッコいいのですが、私も結構飲んじゃって、隣りのグループでもいろいろとエネルギー
遊びを始めていました。

そうこうする内に、気が付けば夜中の3時…。
明日は午前8時には十二湖へ行く予定なので、みんな早々に引き上げて、それぞれのログ・ハウ
スで深い眠りにつくのでした…。(うぅぅ…、酒くさい…)

と、本来ならば、これでこの日はなんとか無事に終わりそうなものですが、そこはそれ八木橋くんの
こと、何故か隣りの棟で眠るはずのりーちくんを連れて帰って来たのでした。

「おいっ、りーち…。今日は俺と一緒に寝よ。いいな、りーち…」
「はい…。でもベッドが足りないんじゃ…」
「ん…?ベッド…?い〜の、い〜の、そんなもんいらん。ココ、この床に布団敷いて一緒に寝れば
いいしょ」

と、その時タイミング良くトイレに入っていた前田さんのベッドから素早く掛け布団と枕を奪っていく
のでした…。
トイレから帰って来た前田さんは、まるで狐か狸につままれた様にキョロキョロと周りを見回して状
況を納得したのか、「おいおい、そりゃぁないやん。俺にどうやって寝ろっちゅうの?」
と言ってる間に、何処かから毛布を見つけてきたりーちくんが床にそれを敷き始め、なんとか前田
さんも眠りにつくことが出来たのでした。

ホント、前田さんて、、、気の毒…。

灯りも消され、「しぃぃ―ん」と静まりかえった吹き抜けの2階のベッドで横たわっていた私の耳元に
は、1階の広間に二つ綺麗に並べられた毛布の中から、まるで前世から知り合っていた親友か兄
弟のように八木橋くんとりーちくんの話し声が何時までも何時までも、、、、。

「グゥ〜、ガァ〜、ぴぃ〜、、、」
って…、「も、もう寝てる…。(涙)」


【龍の眠る青い池…!!】

朝7時朝食。そして8時には十二湖の湖畔に立ちたいネ。とは予定していたものの、つい4時間ほ
ど前まではあんなにドンチャン騒ぎしていたのですから、果してみんな集まってくるのだろうかと心
配していました。
そんな私の心配をあざ笑うかのようにレストランには瞼を少し腫らしながらも、二名を除いた全員
が元気で集まり、朝食を取っていました。
“えっ…、八木橋くんは…?”と目で探すと、さすがに少し顔色が悪く、やつれてはいましたが、家族
と一緒に黙々とご飯を食べているのでした…。

“さすが、みんな能力者。やる時には、やるもんだ…”と、感心するばかりでした…。

予定より少し遅れて十二湖に出発。途中、道路が工事中の為に通行止になっており、仕方なく別
ルートを行くと、そこは昨日泊まったサンタランドから、僅か5分位しか離れていない閉鎖中のキャ
ンプ場らしき駐車場でした。
そこから徒歩で往復40分ほどの場所に、十二湖最大のエネスポットである『青池』がありました。
案内を見ると、一番短いコースで50分コースと書かれてありました…。

大きく深呼吸した後、みんなそこを目指して、黙々と歩き始めたのでした。
その光景は、まるで砂漠のオアシスに一滴の水を求めて歩くキャラバン隊のようで、違っているとこ
ろがあるとすれば、それはその集団がやたらプンプンと酒臭いという一点だけかもしれません…。
しかし、疲労困憊している身体から最後のパワーを搾り出すように歩き出すその姿は、もし見てい
る人がいたならば、思わず感動の涙を誘ったことでしょう。(笑)

辿り着いた『青池』は、その名の由来通りにまさしく青い湖でした。湖の脇にあった立て看板を読ん
でも、その湖の青さは、現代科学でも未だ解明されていないと但し書きされていました。
周りの湖が昨夜の雨も手伝ってか、濁り、薄汚れた茶色であったことを思うと、その一際鮮やかに
湖底まで青く輝き、見ているものを吸込まんが如くに何処までも青くて清い水…。
思わず駆け寄って、湖に手を差し入れ、その青い水を己が手にすくってみたくなったのは私だけで
はなかったようでした。

さてここで前田さん直伝による、正しい十二湖でのエネ散策実習が始まるのです。みんな夕べ教わ
った通りに裸足で湖に入り、左手を腰に当て、あらかじめ用意していたペットボトルの水を飲み干
すのでした。(なんでぇ〜…?)

湖の対岸では八木橋くんが青池の龍を捕まえて、エネルギーを送っていました。
彼の手の中にある龍のエネルギーが、こちら側で見ていた私の手にも伝わってきました。
彼の掌の中でピクピクと元気良く躍動している何かの塊が、空間を飛び超えてリアルタイムで私に
も感じられるのでした。
しかも最初のエネルギーより、それはドンドン成長し、大きくなっていくのでした…。
みんな次々と八木橋くんから、その龍を手渡され、それぞれがそれぞれの感覚で感じ取っていたよ
うでした。これこそが生きた研鑚なのでしょうネ!

帰り道、八木橋くんがすぐ前を静かに歩いている辻くんのお尻を見ながら、「辻くん、龍ちゃんのし
っぽ付けてあげようか…」と彼が返事をする前に、既に辻くんのお尻には青池の龍のしっぽだけが
くっ付いて、それはそれはチャーミングというか異様な光景でしたがネ…。(笑)


【十三湖の龍orしじみ…?】

さぁ、いよいよ今回のエネツアー最後の訪問地、次は十三湖である。距離的には100キロ弱、車
で走って約2時間足らずの距離なのです。
車9台、とにかく十三湖目指してバラバラに出発ことになりました。とは言え、とにかく来た道である
101号線を走るだけの真っ直ぐな道路。
逸れるはずも無いのに、気が付くと何時の間にかみんなバラバラになっていました。

途中、遮光器土偶で有名な『亀ヶ岡遺跡』や、遮光器土偶、通称『しゃこちゃん』そのものを形取っ
て造られた『木造駅』、そして何度も何度も目に飛び込んで来る『三内丸山遺跡』まで何キロと表示
された看板、それら数々の有名スポットを尻目に、ただひたすら走りつづけるのでした。
その内、トイレ休憩で止まった公園が偶然にも『しゃこちゃん広場』という公園で、肝心のトイレはシ
ャッターが降ろされており使用不可でしたが、しゃこちゃんの大きな石像があり、思わずみんな“し
ゃこちゃんポーズ”で写真をパチリ…。

十三湖が見え出した頃には、その対岸にまさしく大昔には日本のピラミッドであったのでしょうか、
靄山が見えてきました。周りの山とはその色も違っており、妙に人工的な色をしているのです。
しかも綺麗な三角錐…。
しかし、みんなの「ココにもアソコにも行きたい」という切なる思いを断ち切り、ただひたすら十三湖
を目指し車を走らせるのでした。

そして十二湖から走り続けること約2時間、最終目的地である『十三湖』が視界一面に見えた時、
「痛てっ!!」
と、後部座席の北川君と私は同時に叫んでいました。
そうです、北川君は昨日の同乗者である藤原君から“あの車では怪しいことをやっている”と聞かさ
れて、今朝から車をチェンジして乗り込んでいたのでした。
(その割には殆ど眠っていましたが…笑)

その時の私は、まるで右足首を何かに噛み付かれたような感覚で、しかもその感触は徐々に這い
上がって来るようなのです。
隣りに座っていたハセガワさんも、両足先を「パクっ」と何かに噛まれたようだと言っていました。
あまりの激しいエネルギーに車中から十三湖を見渡すと、その湖畔には、まるで十三湖そのもの
をご神体として奉り、その荒ぶる魂を鎮めるかのように、大きな大きな鳥居が建てられているので
す。

“あぁ…、十三湖のエネルギーは十二湖のものより強烈なんだ。
だからこんなに大きい鳥居が建てられているんじゃないの?と言うことは、こちらも龍か…?しかも
今度はピンク色…”と、その時感じたのでした。
(しかしハセガワさんは後で、実はあの時は、大きなしじみに挟まれたようだったと話してくれました
が…笑)

やっと全員到着したその駐車場には、やはり私たちより後で出発したはずの八木橋ファミリーが先
に待っていました。(後で知ったのですが、八木橋くんのレンタカーにはカーナビが付いていたそう
です…。なぁ〜んだ!)

みな長時間を揺られながらじっとガマンしていた狭い車中から逃げ出すように、広くて動かない大
地に降り立ち、背伸びしながら「ふぅ〜」と一息ついたのでした。

“さぁ、これが最後のエネ散策!”と期待を胸に秘めているのか、「しぃぃ〜ん」張り詰めたような静
けさの中、そんなみんなを前にして、八木橋くんがあくまでクールに第一声を揚げるのでした。

「はい。ココが十三湖です。それじゃこれで現地解散しましょうか…」

「えぇ―っ!!」

それを聞いたみんな、ホントに全員が大声で一斉に叫んだのでした…。

「えっ?まだ何かやるの…?」と八木橋くん…。
「2時間もかけてココまで来て、ナンもしないで解散は無いんじゃないの…。何処か歩くとか、昼飯
一緒に食べるとかさぁ〜。写真だって、まだ全員じゃ撮っていないしさぁ〜…」と、わたし…。

「あぁ、そうネ。それじゃこの辺りの適当な場所で全員で適当に記念写真でも撮って、その後は適
当に歩いて、適当に昼食べて、適当に2時半くらいにココに集まりましょうか…」
「適当に、適当にって…」って、それって今私の喋った言葉に「適当に」をくっ付けて答えてるだけじ
ゃん…。
やはり流石の八木橋くんも、きっと疲れているんだろうなぁ〜…。
それにしても、ホント、「適当に」だワ…。

とにかく十三湖をバックにしてみんなで適当に記念撮影。あとは『中の島ブリッジ・パーク』へ行く人
、食事を取る人にそれぞれ分かれて、集合時間の2時半までの時間を久しぶりにのぉ〜んびりと過
ごしたのでした。
運転疲れしていた私は前田さん、アンディーさん、生田さんの4人で十三湖近くの『しじみラーメン』
と大きく看板に書かれてあった大衆食堂に飛びこみ、昼食を先に取ることにしました。

「タマちゃん、十三湖名物しじみラーメン食べるんやろ。今回ツアーに参加出来なかった、とださん
に報告せんとアカンしなぁ〜」
「えっ、私はカキフライ定食でいいですヨ」
「えっ、十三湖まで来て、カキフライかいな…。俺はっと、うぅ〜ん、カモ鍋定食ネ」
「・…………。なんだソレ…」

結局、私が注文したカキフライ定食は無くて、しじみラーメンとおにぎりを注文しました。
十三湖名物のしじみラーメンは、想像していたよりアッサリ系の塩味で、昨夜の酒で大層疲れてい
たであろう私の肝臓をやさしくトリートメントしてくれるようでした。

さっさと昼食も済ませ、力の付いた前田さんは、「さっ、儀式、儀式…」とブツブツひとり言を言いな
がら、サッサと一人、急ぎ足で十三湖へ向うのでした。
そしてズボンの裾をまくり上げ、片手に水の入ったペットボトルを持って、足首まで水に浸しながら、
左手をおもむろに腰にあてがってボトルの水を飲み干すのでした。

「なんだ、前田さん…、さっきと同じじゃないですか…」
「なに言うとんネン。さっきのはリハーサル。実は、コッチが本命なんやで…」
「………・。」

“それじゃさっき十二湖で教わった通り正直にやってたみんなは、あまりにも憐れ…”と思いながら
も、私も前田さんの隣りで同じように儀式をサッサと済ませたのでした。

そんな中、すずめくんが「前田さん、この石のエネルギーどうでしょうか?」と、家から持参したので
しょう、緑色した真ん丸い石を持って近づいて来るのでした。

「どれどれ…。うぅ〜ん、ちょっと薄いかな…。こんなとこでやってたら十三湖に落とすでぇ〜」
と、まるでその言葉が合図と言わんばかりに、その宝玉はすずめくんの手を離れ、湖畔の石段を「
コン・コン・コン」と音を立てながら見事に十三湖へと転がり落ちて行ったのでした。
それを慌てて拾おうとして駆け寄ったすずめくんが、今度は石と同じ場所に「ポッちゃぁ〜ん…」と音
を立てて背中から滑り落ちるのでした。

その光景はどちらもまるでスローモーションを見ているように鮮明に今でも私の脳裏に焼き付いて
います。
その後ズボンのお尻とシャツの背中をビショビショに濡らしながら懸命に湖底を探しているのです
が、結局見つかることはありませんでした。

「すずめくん、あの石はきっと十三湖の神さんが欲しかったんじゃないのかな?だからココに置いて
いった方がいいんだよ。神さんにプレゼントしたと思えば諦めもつくでしょ…」と私が言うのですが、
「はい、そうですネ」と答えながらも、彼の両手は残念そうに湖底をいつまでもまさぐっていたのでし
た…。

それを見ていた数名の参加者が「どうしたの、どうしたの?」と集まって来て、その集まった人達に
前田さんが再び十三湖の儀式を教えるもんだから、大勢で裸足になり十三湖に入水していくその
様は、まるでインドの聖なる川、ガンジス川の沐浴のようだなぁ〜と、私は一人感心するのでした。

実は、この時十三湖では不思議なことが起きていたのです。
前田さんと私が例の儀式を終えて、アンディーさんの待つ湖畔の石段に戻って腰を掛けていると、突然アンディーさんが「ウワ、ウワッ!」と声を発して、もう一段上の石段に避難するのでした。
その異様な光景に湖面に目をやると、今までは鏡のように平らで静かだった湖面が何処から来る
のか波紋が生じ、その最初の波が白い波頭を見せながら先程まで私たちが座っていた石段に打
ち寄せていたのでした。

それは私たちのすぐ後に儀式を済ませたハセガワさんと上野さんの時にも同じように起きたのでし
た。しかし不思議に思い、何度湖を見渡しても小舟の一艘たりとも通る気配すらないのです…。
それはまるで十三湖が、私たちの思いを湖畔から湖の中央へと運び込んでくれているかのように
感じられるのでした。

しかしその祝福の波も、すずめくんの1件以後は何人が儀式を行なおうとも二度と起こることはあ
りませんでした。
「あ〜らら……。」

十三湖湖畔の駐車場で、みんなと分かれ、また最初の4台で青森駅へ引き返しました。
車の窓から見える青森の空には数十羽の海鳥が舞い、「ありがとう、また来いよぉ〜!」と微笑み
かけているようでした。
「うん。きっと…」
と返事をしようとした時に、突然一陣の風が吹き抜け、私の声にならない声を何処かに運んでいき
ました…。

とにかく慌しくも楽しかった今回の十二湖エネツアー…。
名前通りのエネルギー・ツアーにならなければどうしようと心配していたのですが、神社・遺跡等を
訪ねることだけがエネツアーや研鑚ではないこと、こうやってココにみんなして集うことに意味もなく
、ご褒美も、能力アップもなんにもないけれど、参加された一人一人の方の記憶と身体の細胞の奥
深くには、きっと何かが刻まれたことでしょう。

この中から、次のPH研鑚会を担う人が出てくるかもしれないし、他団体へ移る人、また独立する人
も出てくるのかもしれません、あっさりエネルギーの世界から足を洗う人、プロを目指す人…。
そう、いろいろな形があっていいのです。
とにかく楽しければいいのです。ツアーを終えた、今の私に言えることはそれだけかな…。

さて、みなさんの細胞は、今日なにを感じて振動していたのでしょうか…。
この世界、それすら“わからん”ことなのかも知れませんがネ…。(笑)


【エピローグ】


みんなと分かれた私は、この体験談を書くためにまた函館へと引き返しました。
体験談をなんとか4日間で書き上げ、昨日は八木橋くんの車を借りて、道南地区“江差”のすぐそ
ばにある『上ノ国』へドライブがてら遊びに行ってきました。

山越えの片道約2時間。ほとんど行き交う車もいない山道で車を走らせながら、“私は何故『上ノ国
』へ向うのだろう…”と考えていました。

私は行かなかったのですが、十三湖の中の島ブリッジ・パークの中にある『市浦村歴史民俗資料
館』には上ノ国にある『夷王山(いおうざん)』の写真がたくさん展示してあったと八木橋くんから聞
かされていました。
そして昔十三湖から、ここ上ノ国へ渡り住んだ人が大勢いることも…。

夷王山の山頂にはポツンとひとつ『夷王山神社』があり、その神社の鳥居は十三湖の方角を向い
て建てられているようでした。

その後昼食を取るために訪れた『文珠(もんじゅ)』のレストラン、その建物から大間ノ崎の海岸線
に降りて行くことができ、そこには『神の道』と呼ばれる大きく穴の空いた岩があるのです。
この穴の上の岩が階段のようになって海から続いており、まるで海の神が陸に上がる為に用意さ
れた道のようなので『神の道』と名付けられたそうです。

実際に地元には、
「この神の道から夜更けに不思議な燈が上がるが、これはいわゆる『龍燈』で、
海の神(龍神)が太平山の山の女神に逢いに、『龍燈』となってシャンシャンと八幡牧野を通ってい
く…。」
という伝説が語り継がれていたのでした。

そしてその岩の上には木製の人の背丈ほどの大きさの鳥居だけが建てられていました。
その鳥居も十三湖の方を向いているようで、十三湖、神の道、夷王山という点が線に繋がるようで
した。

今回のツアーでは八木橋くんが先に『上ノ国』を訪れ、その後青森の十三湖へ…。
今私が偶然にも、その逆のルートを辿るように十三湖から上ノ国を訪れているのです。
何故でしょうか、このことに何か深い意味があるのでしょうか?

今はわからないとしか言えません、それとも全てのことに意味などないのかもしれませんネ…。
ただ、この終わることなく“ぐるぐる”と繋がり続くシンクロを、楽しみ、味わい続けるだけです。

点々と姿を現わし始めたその渦が次第に回転を速め、まるで多面立方体の網のように紡
がれ広がりゆく…、何処までも、何時までも…。


                                           2002・4・19函館にて

                          もどるつぎへ                                                          


LLast Update : 2002/4/24