一太郎の危機

〜 またまた無知な裁判所のトンデモナイ判決 〜



またまた出たトンデモナイ判決

もともと僕は裁判所に対して非常に批判的である。裁判官の頭が悪いからである。例えば、科学的知識が全く欠落した白痴裁判官が下した「もんじゅ」設置許可無効判決とか、世の中の企業の仕組みを理解できない世間知らず裁判官が下した巨額発明報酬判決とか、トンデモナイ判決が多い。外国人の公務員管理職への登用を認めた判決もそうだ。このようなトンデモナイ判決が出た場合、たいていは、上級審で判断は覆され、常識的な判決が言い渡される。巨額発明報酬も高裁レベルでは常識的な水準で和解が成立したし、外国人の公務員管理職登用問題でも、最高裁が良識ある判断を示した。これが日本の裁判システムの救いではあるが、今回、またまた地裁レベルでトンデモナイ判決が出たワープロソフト「一太郎」の販売差し止め判決

これは、松下電器産業が、徳島市のジャストシステムの看板商品であるワープロソフト「一太郎」と画像ソフト「花子」に、松下の特許権を侵害する部分があるとして、販売差し止めなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁が松下の請求を認め、製造、販売の差し止めと在庫製品の廃棄を命じたのだ。


裁判の経緯

問題となったのは、一太郎と花子に搭載された「ヘルプモード」「バルーンヘルプ」と呼ばれる機能だ。これは、マウスの絵と「?」マークが並んだボタンをクリックして「ヘルプモード」をオンにしておくと、マウスカーソルに合わせて別のボタンの機能の説明文が浮き上がって簡単に表示されるものだ。例えば、ヘルプボタンをクリックした後に「印刷」ボタンをクリックすれば、「画面上の文書を印刷します」などというショボイ内容の説明が表示される仕組みだ。はっきり言って、たわいもない毒にも薬にもならない、って言うか、むしろ鬱陶しいだけの迷惑で下らない機能であり、一体、誰が使うのだろうと疑問に思うようなバカげた機能だが、一太郎の場合、1996年発売のバージョン7以降で使用されており、これまでに約800万本が出荷されたという。

松下電器はこのバカみたいな技術(技術と呼べるのか?)について、同社が1989年に出願し、1998年に登録されたアイコンに関する特許を使用している、と主張している。ジャストシステムは「一太郎のボタンはアイコンではないので、特許権を侵害しない」と反論していた。

実は、この同じ特許について、ジャストシステムの「ジャストホーム2家計簿パック」という家計簿ソフトにおいて、同じように松下とジャストシステムが争った裁判では、東京地裁の同じ裁判官が特許権の侵害を認めず、ジャストシステムの勝訴に終わっている。この裁判は、2002年に松下が「ジャストホーム2家計簿パックを搭載したソーテックのパソコンが同特許を侵害している」として、ジャストシステムとソーテックに対し、パソコンの販売差し止めを求める仮処分を申請したものだ。その後、ソーテックが同パソコンの販売をとりやめたため、松下は申請を取り下げた。
一方、怒ったジャストシステムは2003年に、「この家計簿ソフトは松下の特許権を侵害しておらず、特許法に基づく差し止め請求権が松下にない」ことの確認を求める訴えを起こした。この裁判において、東京地裁は2004年、ジャストシステムの特許権侵害を認めない判決を下し、ジャストが勝訴した。これは、この家計簿ソフトのボタン表示が「?」記号だけだったため、同じ裁判官が「記号はアイコンではない」として松下の差し止め請求を退けたのだ。

ところが、松下は、敗訴判決があった同じ月に、今度は「一太郎」と「花子」が同特許権を侵害している、として、ジャストシステムを再び提訴したのだ。なんてしつこい奴。
そして、この裁判において東京地裁は、「問題のボタンは絵で機能を表示するもので、特許明細書上の『アイコン』に該当する」と判断し「両ソフトをパソコンにインストールする行為は、松下の特許権を侵害する」と認めたのだ。そして、「同特許には進歩性がない」としたジャスト側の主張を退け、一太郎と花子の製造販売と廃棄を命じたのだ。

なんだか分かりにくいのですが、要するに、この特許の内容が、特許に値するような画期的なものかどうか判断していたのではなく、単に、ジャストシステムのソフトのボタンが「アイコン」と呼べるものかどうかで判断が分かれた、という、誠にショボイ話なんです。家計簿ソフトの場合は、「?」マークだけだったので、単なる記号であってアイコンではないが、一太郎の場合はイラストも着いているので記号ではなくアイコンであるから、特許侵害になる、なーんていう訳の分からないトンデモナイ判決なんです。裁判官って、こんなしょーもない事しか判断できないのか?本当に知能が足りないようです。
だから、ジャストシステムも、争うのを止めて、「?」マークだけのボタンに戻せば、しつこい松下も、もう手を出せなくなるはずだ。それをせず、あくまでも徹底的に争う姿勢を崩さないのは、松下の嫌がらせに怒っているからか、それとも、あまりのバカげた判決に怒っているからか。


松下の姑息な戦略

近年、日本企業も、知的財産権戦略を強化し、特許権を争う裁判が相次いでいる。諸外国では、ずっと以前から知的財産の管理が重要な問題であり、多くの企業が戦略的に対応してきた。この分野で対応が遅れていた日本企業は、外国企業による多くの訴訟により、厳しい対応を強いられてきた。その意味で、知財保護は企業の研究開発意欲を高め、競争力を強化するため、歓迎すべき流れだ。

しかしながら、今回のトンデモナイ判決は、大きな疑問点が残る。
まず、許せないのは、「時代遅れの特許を持ち出してきた」という松下の姑息な戦略である。松下電器はこの特許を1998年に取得したが、同社がワープロ専用機などの文書処理装置について出願したのは1989年であり、急速に進歩が続く情報処理の世界においては、既に化石化したような古い技術だ。もともと子供でも誰でも思いつくような稚拙な内容の技術だが、松下がこの古い特許に基づきジャストシステムを提訴したのは2004年のことであり、15年以上も前の技術に関する争いだ。
訴えられた一太郎のヘルプ機能は1996年から搭載されており、松下の特許が成立したのはその後の事だ。広く浸透した技術が9年もさかのぼって違法とされた形である。しかも、松下自身は、この技術を使ったワープロやパソコンをもう製造していない
嫌がらせ以外の何ものでもないと言えよう。嫌がらせでなければ、ケチくさい小遣いかせぎだが、ここまでしつこく裁判するってことは、嫌がらせだろうなあ。

知財保護の必要性は認めるが、このように、既に一般化した技術についても特許出願する例は他にもあり、新しい製品を開発するにあたっての手枷足枷になる状況が懸念される。中小零細企業ではソフトの開発に手一杯で、法務にまで十分な人材も手間も資金も回せない。こうした訴訟が相次ぐと、開発意欲を萎縮させかねない。
もちろん、特許出願から特許成立まで10年もかかっているという日本の貧弱な特許行政も大いに糾弾されるべきではある。こななロクでもない下らない誰でも考えつくようなバカみたいな内容の特許の審査に10年もかかるってのは、一体どういう事だ?て言うか、こんなん特許として認めるなよなあ

さらに、松下の訴訟戦略は、相手を選んで訴訟するという点でも非常に姑息で許し難い。上に書いたように、松下が最初に訴訟を起こした相手はジャストシステムとソーテックだった。その時点でジャストシステムの製品をプリインストールして販売していたのはソーテックだけではなく、日立やNECも同様だったのだが、松下は訴訟対応能力が劣るソーテックだけを標的にした。大手電機メーカーは、ライバル企業とはいえ、何らかの取引関係があるのが普通で、訴訟能力も考慮すれば敵に回すのは得策とは言えないとの判断からだ。いくら直接の相手がソーテックだけだったとしても、仮に訴訟に勝てば、後は他のメーカー各社にライセンス契約を申し入れるだけで優位な立場に立てるし、他のメーカーとしても、リスク管理に敏感なメーカーであれば、これを受け入れる可能性は十分にある。

海外でも、ソフトを巡る知的財産権争いは少なくない。て言うか、アメリカでは非常に多い。アップルコンピュータがアイコンを使ったマイクロソフトのウィンドウズを著作権侵害で訴えたのは有名な話だが、7年がかりの訴訟の末、1995年に敗訴してしまった。今回の下らないヘルプ機能に比べると、もっと本質的な問題が争われた訴訟であり、素人が見ても、ウィンドウズは明らかにマックを猿真似したものだったのだが、それにもかかわらず裁判ではウィンドウズの勝訴に終わった。これは、使いやすさや機能の向上を求めたソフトの進化を裁判所が認めた結果だ。何から何まで特許として認めてしまうと、進歩が無くなるからだ。研究成果を守るのは企業として当然だが、先人の技術を改良し機能を高めていくソフト開発の性格を考慮することは、消費者のためにも大切である。


特許に値しない内容

上にも書いたが、今回の争点の特許は、誠に下らない内容であり、技術と呼べるようなものではないし、なんでこんなんが特許に認められるのか理解に苦しむ。しかも、10年もかかってんだぜ!一体、日本の特許行政って、誰がやってんだ?まさか、裁判官と同じように技術が全く分からない素人役人なのか?

松下はジャストシステムに対し、1995年からライセンス契約を申し入れていたが、ジャストシステムは「同技術はWindowsに標準搭載されている機能を利用したもので、松下の特許権を侵害していない」としてこれを拒否していた。その通り。これと同様なヘルプ機能は、マイクロソフトのウィンドウズの機能である「ポップヒント」と同じようなものだ。て言うか、何度も言うけど、そもそも意味の無いバカみたいな下らない機能であり、特許の意味なんて無いって。

ジャストシステムは今回の訴訟で、「松下の特許は、当時の刊行物などを読めば容易に着想できるため進歩性がない」とし、特許の無効を主張していた。当たり前だ。ていうか、そもそも、一体誰がこんな下らない機能を使うんだ?
これに限らない。最近のソフトには、本当に意味の無いバカげた機能が多すぎる。マイクロソフトのオフィスにイルカやお姉さんが登場した頃から道を踏み外してしまったような気がする。一体何なんだ、あれは?ユーザーをバカにしているのか?もちろん、こういう鬱陶しくて迷惑なだけの機能は、使わなければ済むのだが、初期設定では、一通り使うような設定になっていて、いちいち設定を変えてやらなければ、おせっかいな機能が飛び出てくる。改行しただけで勝手にインデントが設定されたり箇条書きに番号が付けられたり、と、迷惑千万だ。
そもそも、ジャストシステムも、こなな下らないヘルプ機能を搭載するな、と言いたい。

そして、今回の判決で最も重大な問題であり、呆れかえり憤慨するのは、このバカげた内容の特許を擁護するだけじゃなく、この下らないちっぽけな、たかがヘルプ機能の細かい手法の問題で、「一太郎という非常に優れた統合型ワープロソフトそのものを製造・販売中止せよ」ってのは、信じられない。仮に、百歩譲って特許の侵害があったとしても、こなな下らない部品の話なんだから、松下に少しばかりの小遣いをくれてやればいいくらいであり、製造・販売中止ってのは裁判官の思い上がりでないか?


ジャストシステムの経営問題


一太郎は国内で広く使われてきたジャストシステムの看板商品であり、これが販売中止となると、ジャストシステムは直ちに倒産だ。ただし、判決では松下側が求めていた仮執行宣言は「相当でない」として見送られており、ただちに販売停止になる訳ではないジャストシステムが控訴した場合は判決は確定せず、上級審で判決が確定するまでは、これまで通り販売などを継続できる流通した商品の使用にも問題はなく、ユーザーはこれまで通り何の法的問題もなく使用を続けられる。当然の事ながら、ジャストシステムは控訴する方針であり、当面の製品販売には影響はない。2月10日に予定している一太郎の最新版「一太郎2005」「花子2005」の発売も予定通り実施するとしている。ただし、上級審で判決が確定すれば、侵害部分を除かない限り、製造販売の中止を迫られる。

ジャストシステムと言えば、一時はソフトウェア業界のスターだった。徳島の小さな会社が作ったワープロソフト「一太郎」が、日本語ワープロの標準ソフトになったのだから、すごかった。国内のワープロソフトでは圧倒的なシェアを握っていた。ところが、悪の帝国マイクロソフトが日本に攻めてきて、圧倒的なシェアを持つウィンドウズとの違法な抱き合わせ販売を強引かつ強力に進めた結果、あっという間に一太郎のシェアを奪い、ジャストシステムは経営危機に陥った。その後、ジャストシステムはリストラを進めると共に、企業システム系事業の拡大を進めており、なんとか最悪期からは脱しつつあるが、売上が急減したとは言え、今でも一太郎と花子は売上の半分近くを占める大黒柱であり、特に地方自治体では広く普及しており、判決が販売に悪影響を及ぼした場合、業績悪化も懸念される。
もちろん、日本の裁判所の常として、このようなトンデモナイ判決は、たいていの場合、上級審で判断は覆され、常識的な判決が出るのだが、油断はできない

なぜ、今回、こんなにもジャストシステムの事を心配して擁護しているかと言えば、何もジャストシステムが四国の会社だからではない。てのは嘘で、まさに四国の数少ない優良企業だ(った)からだ。一時の勢いは無くなったとは言え、四国においては多くの従業員を抱える優良企業だ。なんとしても守らなければならない。
一方、松下はと言えば、松下寿という高松に本社のある松下系の企業があり、一時は超優良企業だった。ところが国内製造業の空洞化と共に経営が傾いたため、松下電器が100%子会社化したのだが、それに伴い、事業所がどんどん縮小されていき、かつては四国中に多数の工場があったのに、今では大幅に整理縮小統合されてしまった。多くの従業員がリストラされ、四国の雇用情勢に悪影響を及ぼした。実権が松下本社に移ったため、地域の事情なんて考慮せずリストラされまくりだ。

もともと、僕は松下電器の製品は好きだ。何と比べているかと言えば、ソニーだ。格好ばかりつけて信頼性に乏しく、故障ばかりするソニー製品は嫌いだ。(いっぱい持ってるけど)それに比べて、故障が少なく信頼性の高い松下は、トヨタと並んで好きだ。(今は車もホンダと三菱だけど)
でも、こんな汚いやり方をするのなら、対抗措置として、松下電器の製品の不買運動でも起こそうか。

(2005.2.3)



〜おしまい〜





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